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ザ・フー、ぼくを見て、ぼくを感じて・・・〜第8回

 ♪See Me(ぼくを見て)、 Feel Me(ぼくを感じて)、Touch Me(ぼくを触って)、 Heal Me(ぼくを治して・・・)♪(ピート・タウンゼンド作詞作曲)

 コンサート会場全体に観客の歌うコーラスが響きわたったんです。感動!しました。ザ・フーのコンサート、アンコール曲での出来事。

 僕が観たのは11月17日の武道館公演。会場に入ってまず、満員のお客さんにびっくりでした。
「単独では初の来日公演」という、ちょっと苦し紛れの、だったら「オリジナル・メンバー揃えろ!」とつっこみを入れたくなるような、プロモーション。関東地方では横浜と埼玉の両アリーナ公演プラス武道館での二回公演。大変な数のお客さんを動員せねばなりません。「大丈夫かしら、たくさんのお客さん、入って欲しいよ」と関係者でもないのに、願っていました。

 でも、ノー・プロブレム。スタート時間には二階のてっぺんまで席は埋まり、会場が一瞬暗転、メンバーが板つきになると、観客総立ち。「よく来てくれたね。よくこれまで頑張ったね・・・」そんな感じいっぱいの大きな暖かい拍手で伝説のバンドを迎えます。

「よかった、よかった、よかったねー、ザ・フー。たくさんのお客さんに囲まれて・・・」私、心底そう思いました。

 私が現役のラジオ・ディレクター兼ディスク・ジョッキーだった頃、ザ・フーとか、キンクス、スモール・フェイセス、ムーディー・ブルースなどなど、イギリスのバンドでかっこいいバンドたくさんいたのだけれど、もうひとつ通向けでした。新曲を一生懸命オンエアしても、なかなかヒットに結び付かなかった。

 みなどちらかというと男子に人気あるバンドで、「どのバンドが好き?」「ザ・フー」なんて答えると「変わったやつ」と見られがちだったんです。日本のバンドでも、はっぴいえんどとか、ジャックスとかのファンだと「性格、暗いのね・・・」なんて言われて終わってしまう時代でもありました。

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 その頃はビートルズがポップス音楽界を席巻していた時代。それ故でしょうか、イギリスのバンドでしたら、なんでもかんでも「リバプール・サウンド」ってよんでしまう媒体があったぐらいで、ほんと、アホかいな。

 ザ・フーのパフォーマンスが圧倒的にすごい!というのは、音楽専門雑誌にもしばしば書かれ、当時の洋楽ロック・ファンの間ではけっこう注目されていたのだけれど、いろいろあったのでしょうか、ほとんどの人気バンドが来日公演を行っているのに、ザ・フーだけはあかんかった。

 ロックン・ロール前期ではエルビス・プレスリー、そして後期ではこのザ・フーが「日本に来なかった大物」ではなかったでしょうか。

 ポピュラリティーという点ではビートルズとかローリング・ストーンズとかもっと凄い人気バンドがたくさんあるだろうけれど、ロックン・ロール音楽の凄さを体感させてくれるというか、演奏の派手さ、圧倒的な音の大きさ・・・観客をもっとも興奮させるライブ・ステージを最初に作ったのは、このザ・フーであること、間違いありません。オリジナルの4人編成は、正にモンスター・ロックバンドでした。

 今回のステージ、あの愛すべきキース・ムーン狂気のドラミングやバンドの柱だったジョン・エントウィッスルのベースがいなくなっても、ピート・タウンゼントは水車回しのギターで、ロジャー・ダルトリーはマイクぐるぐる回しのボーカルで、一生懸命、われわれにザ・フーを感じさせてくれました。

 ピート・タウンゼントは彼らの代表作「トミー」を何度もレコーディングしています。その中の一つに、1972年、ロンドン・シンフォニー・オーケストラの演奏、ゲスト・ソロイストにリンゴ・スター、ロッド・スチュアート、スティーブ・ウインウッド、リッチー・ヘイブンス、サンディー・デニーなどを迎え制作されたオールスター・キャスト盤があります。

 「トミー」は画期的なコンセプトを持っていました。ですから少しでも多くの方にこの良さを知ってもらいたい、そしてザ・フーのファンになってもらいたいと、僕が制作とおしゃべりを担当していたニッポン放送の深夜放送「オールナイトニッポン」のためこのLPの日本語バージョンを作ったことがあります(1973年の春、2時間番組として放送)。オリジナルの雰囲気やストーリーを壊さないようにと、英語の歌の合間に日本語をかぶせていくという手法をとりました。大変な難作業でしたが、無事録音を録り終え、2時間番組として放送。番組を聴いた多くの方から「大変に、面白かった、良かった」とおほめの言葉をいただいた時は、ほんと、嬉しかった!

 そのとき使ったLPレコード、そしてボロボロになった放送台本などが出てきました。役者の方々、当時はみなさん若かった。いまですと、とんでもない豪華なキャスト、超一流どころの声優さんばかり、故山田康夫さんのお名前もみえます。


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放送は、こんな風に始まりました。

 [このロックオペラ「トミー」は、1919年、第一次世界大戦がまさに終わろうとしている頃、イギリスのある町で生まれたトミーという少年の物語です。ロック・オペラなのに、時代が古すぎないかって?いや、歴史はどの一片をとっても現代そのものなのです。ところで貴方は、モノを見てますか?聞いてますか?そして話してますか?もし、このうちひとつでも、意識的に閉じているとしたら、あなたもこのロック・オペラの主人公トミーと同じかもしれません]

 ♪See Me(ぼくを見て)、 Feel Me(ぼくを感じて)、Touch Me(ぼくを触って)、 Heal Me(ぼくを治して・・・)♪

 ・・・今でも充分に通用する、いや今の時代だからこそ必要なテーマ。武道館で聴いた観客のコーラスが時代の声のように思えたのは私だけではないでしょう。

2008/11/28 | Comments [0]

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