2010.02.24UP

何処か遠くに行くことは、すごく私の性に合っている。
スタイリストという仕事の「ご利益」の何割かは、地球のどこかへ飛んで行ける、
ということだ、と思っている。
この頃は、世の中の状況が厳しくて、なかなかとんでもないところには行けないけれど
何時だったか、こんなところに行った。
アリゾナのナバホの居留地をベースにこの場所に数日間繰り出した。
よくよく見ると、白いものが見える。4月頃だったが、雪が降ったのだ。
広大な景色の中で、膨大な雪かき作業が行われた。

馬に乗った男性たちが何十人か。
この衣裳は日本から持っていったが、オーデション前に用意しなければならない。
藍染めのしっかりした生地で、どんなサイズの出演者にも合うようなラフで、
男っぽいものを作った。
靴もサイズがわからないから、現場で脚絆のように革をぐるぐる巻きにして
革ひもで縛った。
映画だと「汚し」という作業があり、そういう作業に年季の入った人たちがいて、
見事に古びさせたり、貫禄をつけたりする。
CMだけど、画面はきわめて映画っぽいので、ここでは赤土の上に衣裳を置いて、
ランチに出てきたトマトケチャップを塗りたくって、やたら蹴飛ばしたりした。
けっこう格好良くなった。

こうして昼間の間は快調に撮影は進んだ。
夕刻になって、グラフィックの撮影。
日か落ちかけると、辺りは急速に寒くなる。太陽が沈んだ
デリケートな時間を狙っての撮影だ。
どんどん暗くなり、私たちはふるえながら見守る。
カメラマンは、シャッターを8秒かけて切るといいだした。
えっ!それじゃ、モデルの女の子は8秒間息を止めて動かないように
しなくちゃいけないの?
そういうのがデジカメじゃないフイルム撮影の味となるのだ。
息が止まりそうな緊張と寒さの中でやっと撮影は終了。

昼間、どこからともなく、ナバホ族のおばあさんが現れた。
私たちが車でやってきたケイタリングサービスでトレーを持って、並んで
食事をもらっていると、このあばあさんも当然のように列に並ぶ。
おいしそうにランチを食べたら、持ってきたインデアンジュエリーを
並べてちょこっとお店開き。
私は飛んで行って、あれこれ買ってしまった。
撮影中に起きるこういう小さなことがおもしろい。
この一枚のスナップが後で私にとって貴重なものになるなんて
考えもしなかったが、今見るとおばあさんの笑顔とファッションが素敵だ。
と、以上はずいぶん前の話だけれど、この生活は今も続いている。
私は明日からオーストラリアロケ。
今は情報管理がきちっとしているから、現場で私がカメラを持つことはない。
でもオセアニアの空気と太陽は私になにがしかのパワーをくれるだろう。
遠くに行く・・・それが楽しみ。
