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2010.02.03UP

続続・新宿・怪人20面相から原宿・ピンクドラゴンまで「ビビアンの生き方」

70年代のはじめ、新宿のロックショップ「怪人二十面相」は原宿に引っ越して「キングコング」に変身した。
それは山崎さんが原宿で大躍進を遂げるきっかけになったが、そのあたりのことは、森永博志さんの
「原宿ゴールドラッシュ」や山崎眞行さんの「宝はいつも足元に」に詳しい。
私は女の友人として眺めてきたことを書いてみたいと思う。

あるとき私が病気になった。
怪人二十面相のスタッフは全員でその頃住家にしていた「静雲アパート」にお見舞いに来てくれた。
その帰り道、山崎さんは現在のビームス近くのビルの地下に、貸店舗の張り紙を発見し、
即座に原宿に移転することに決めた。
もちろん、彼は新しい胎動を始めている原宿に何かしらの予感を感じ、きっかけを
求めていたのだと思う。
だけど、私は冗談半分に「私が病気になってよかったね」といったのを覚えている。

その頃、私は鋤田さんとTレックスやデヴィッド・ボウイの撮影でロンドンと原宿を往復していた。
それで、ロンドンのブティックのウインドウに飾られたデヴィッド・ハミルトンによるビビアンの写真を
「素敵なモデルね」などといいながら眺めたりしていた。
それからビビアンは日本にきて資生堂をはじめとして、広告やファッション誌で活躍し始めた。
鋤田さんが撮った作品を山崎さんが欲しいと言っているのを聞いて、鋤田さんは彼にプレゼントした。
山崎さんはそれをキングコングの壁に飾り、今度は「ビビアンを店に連れて来てほしい」と言った。
私がそうしたのか、誰かがビビアンを連れていったのか忘れたけど、ビビアンが店に現れた瞬間から、
ビビアンは山崎さんのマドンナになったのだった。

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私は彼女がモデルをリタイアした後も、たびたび逢っていた。
彼女はハーパースバザー誌の編集者になり、その編集部に逢いに行ったことがあった。
ヴォーグのグレイス・コディントン(注・2009.10.29「寄り道版「ファッションが教えてくれること」
のように、モデルから優秀な編集者やスタイリストに転身する例をみていたので、ビビアンもその道を
選んだのか、と思った。

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彼女は、二階建の家に住んでいた。
らせん階段を上ると、青空が見える明るい家。
家のドアやらせん階段はゴミの集積場にうち捨てられたものを拾ってきたのだ、
と楽しそうに語っていた。
「こんど良い椅子を見つけようとおもうの」と言って笑った。
そう、私もちゃぶ台を拾ってペンキを塗って使ったりしたことがあるけど、
ロンドンだとドアや階段まで拾えるのか...と思った。

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明るい家の中は緑が多かったけれど、家の外にも彼女が丹精した花がいっぱいだった。
彼女の実家ではお母さんが感じのいいイングリッシュガーデンをつくっているそうで、
「イギリスではこういうことはみんな当たり前にやるのよ」
と言っていた。

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その彼女が、ほどなく編集者をやめ、大学生になった。
今までの家を処分してもっと小さい家に移り、もっともっとシンプルな生活をはじめた。
私にとっては、以前住んでいた家はうらやましいくらい理想的な家だったが
今度の家も素敵だ。
彼女はイギリス人の父と日本人の母を持っていたが、このころから日本人の心に
目覚めたのだろうか、陶芸もみごとで、彼女自作の急須や湯飲み茶碗で
日本茶をいただいたりした。
華やかなモデル時代の面影は生活の中に一切なくて、服もモノトーンのものが
ラックに一列並んでいるだけだった。
彼女と一緒に学生街の安いカフェでお茶を飲み、私も信じられないくらい安いローファーを買って
一年間履き続けたりした。
「Greening of the Earth」という仕事で、ロンドンに滞在し、オノヨーコさんの撮影に
参加していたことがあった。
その続きで、BBCで放送されるヨーコさんと息子のショーン君がビートルズゆかりの
場所を訪ねる、という撮影にくっついてゆくことになった。
その時ばかりはビビアンも好奇心いっぱいで、私と一緒に邪魔にならないようにそっと
その撮影を目撃したのだった。

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彼女の家は大家さんの離れにあった。
その庭にも彼女の小さなスペースがあった。
彼女は、確かロンドン大学を特待生で卒業し、一時高校の先生になった。
そのあと、さらに研究のため、一年に何度か調査旅行をする特典が与えられたと聞いている。
彼女は今、どこを旅しているのだろう。

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高橋靖子(スタイリスト)
日本のスタイリストの草分け的存在。現在も、広告、CMなど第一線で活躍中。71年、ロンドンで山本寛斎氏とファッションショーを成功させ、その後、「ジギー・スターダスト」期のデヴィッド・ボウイの衣装を担当。鋤田正義氏によるデヴィッド・ボウイやT・レックスの撮影をアレンジしたことでも知られる。著書に『表参道のヤッコさん』『小さな食卓 おひとりさまのおいしい毎日』『わたしに拍手!』などがある。
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