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2010.02.17UP

森下「みの家」

 うー、さぶい。馬肉で精つけるかとやって来たのは江東区森下交差点。昨年末、新築成った人気居酒屋「山利喜」の客の行列を見て、数軒隣りの「みの家」へ。創業明治30年、堂々たる木造総二階家に上がる金文字銅葺き大看板の桜花に、「なべ」のマークは登録商標だ。馬肉は赤いので「桜鍋」と言うのだろう。年期の入った黒玉砂利洗い出しの玄関で、印半纏の下足番のおじさんが迎え、履物を脱ぎ大きな下足札をもらう。
 足裏に気持ちよい籐敷き広間に、ガス台を置いたステンレス張りの長い座り机が並ぶ。高い格天井、鶯色の土壁、腰板は桜の木の皮が貼られて桜花の透かし彫り。往年の料理屋の風格十分ながら、庶民の料理屋なのがいい。正面の酉の市熊手はたぶんこれが最大だろう。
 できますものはもちろん「馬刺」と「さくら鍋」がメインで、卵焼、板わさなどもある。「みの家」のロゴ入り鉄鍋は、割下に馬肉赤身とコーネ脂、秘伝の味噌たれ。別皿に葱、白滝、麩、そして溶き卵が添えられる。すぐにぐつぐつ。煮過ぎちゃいけない。卵をからめてぱくり。
ロース、ヒレもあるがおいらはこの基本の赤身が好み。さっぱりと柔らかく、脂は少なく、獣臭は全くなく、マグロよりはコクがあり、鯨ほどアクが強くない。高たんぱく・低カロリー・低脂肪の馬肉は、糖尿病注意のおいらにはぴったりだ。ビールはスーパードライで、おいらはドライビール嫌いだがこれには合う。
 馬刺は、角皿に赤身肉とおろし生姜だけと、大葉や大根で飾らないのが専門店らしい。一皿もぺろり、もう一皿追加だ。合間にとった「卵焼」は卵5、6個は使うと思う大きなサイズで、甘く、少し焦げた東京の卵焼だ。日本酒燗酒は「白鶴」のガラス瓶燗で、この安直さがいい。
 長机をはさんで見知らぬ同士が肩を寄せる、入れ込み座敷の雰囲気がいい。隣の若いカップルは、彼女に取り皿でよそってもらった彼がうれしそうだ。しゃれたレストランより、どっかとあぐらをかいて座る、こういう老舗をデートに選ぶとはいいセンスだ。鍋の追加に豆腐とエノキダケもサイドオーダー。
 ヒヒーン、ああ精ついた。さて「山利喜」突撃だー。


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(写真左) 「みの家」看板(中)さくら鍋(右)馬刺と卵焼



「みの家」

江東区森下2−19−9 
電話3631−8298(バニクヤ)
http://www.e-minoya.jp/

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太田和彦(アートディレクター/作家)
資生堂宣伝部デザイナーを経て独立。デザインと並行して日本各地の酒場を訪ね歩き、『ニッポン居酒屋放浪記』など多くの著作にあらわす。最新刊『太田和彦の居酒屋味酒覧・第2版』(新潮社)は全国の名居酒屋を網羅した集大成。出演のCSテレビ・旅チャンネル「全国居酒屋紀行」は9年目に入り「日本百名居酒屋」として放送中。
新刊『愉楽の銀座酒場』(文藝春秋/1700円)はバーを中心に銀座の 酒場73軒を取材した力作。
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