2009.06.26UP
東京都心から南へ約200キロの
太平洋は黒潮のまっただ中に浮かぶ小さな島、御蔵島。
平らな土地があまりない周囲16キロの断崖にかこまれた島にはおよそ280人が暮らしています。
御蔵島は深い森に覆われ、この森が日本の他の地域と違うのは、国有林がどこにもない、ということなのです。
島の森の7割は村有林で3割は民有林。
そして巨樹の島だったのです。
御蔵島の600本以上の巨樹はなんと全国第2位。
日本一大きいスダジイの巨樹は、幹周り13.79メートル
発見者のひとりである日野さんは見つけた瞬間鳥肌が立ち
大声で仲間を呼んだそうです。
「あった!」ではなく「いた!」と思ったそうです。
この島は風がとても強く、森もその影響を受けますが
島にぶつかった上昇気流はたくさんの雨ももたらします。
森に蓄えられた雨や霧は湧き水となって、これがつくる大小の滝は30もあり海に流れおちています。
伊豆諸島で唯一水力発電所のあるのが御蔵島です。
豊かな森が育むツゲの良木は江戸時代からの名産で
昔は孫が生まれるとツゲの苗木を1000本植えたといいます。
ツゲの木が切り出せるようになるのはおよそ100年後
子孫が末永く暮らせるようにとの思いが込められていました。
年に1~2回山から伐りだしたツゲは船で江戸に送られ
その代金で米や食料などの生活物資を一年分購入して島に運び、
全島民の人数割で分け合ったのです。(扶持米制度)
今でも島民全員が一つ屋根の下で暮らす家族のように
生きるつながりのある暮らしがあります。
髪を梳かすならツゲの櫛。
いやな静電気もおきないし、髪に艶がでます。
春と秋の年に2回行われる先祖祭りは、
島民が一丸となって御蔵島で亡くなった全ての先祖の霊を供養する大切な日です。
島でひとつの共同墓地は、人々が暮らす家々のいちばん高い場所に作られています。
その場所を墓所(はかしょ)と呼び、大切に守り続けています。

黒瀬川の急流と荒波がつくった玉石の海岸から運ばれた
みごとにまるい石で築かれた墓所を下から見上げると
まるでひな壇のようです。
土に埋め込まれた花筒に、同じ高さで花がだ~~と生けられています。
墓という場所の暗いイメージは微塵もなく
今風に言うなら「なんてカワイイ!!」
ということになります。

お墓に供えられる色とりどりの花が入った花かご
御蔵島は、仏教ではなく神道です。
先祖は墓にも海にも家にもいて・・・・
という自然崇拝的な考え方を持っているので
どこにでも神様がいるのです。
人々は、海に花を投げ、やかんに入った水を海にそそぎ
手をあわせます。


「知らない人なんて一人もいないもの
みんなお世話になった人だからね」と言います。
今の暮らしの礎を築いてきた先人との繋がりの大切さを肌で感じている言葉です。
この島もまた、お年寄りの女性が逞しい!
御蔵島が東京都であることを考えると
東京は南にも長いのだと、初めて気づきます。
テレビをつけると、東京とまったく同じチャンネルがそのまま放映されています。
都市に普通にあるものが何もない島の、テレビはそれを運ぶ窓です。
それでも、その窓が開いているだけでお腹がいっぱいになってしまいます。
私たちはモノに支えられて生きているのではないという
あたりまえのことがわかります。
人同士の関係が希薄に感じられる時代の中で、それに悩むなら、ここに来るといい。
海の風が心の邪気をはらってくれます
森は命の源であることを見せてくれます。
ついでに、車社会で歩くことを怠けている足も鍛えてくれます。
なんといっても、坂しかない島ですから。
