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萩原健太さんは、アメリカ音楽を中心にあらゆるポップミュージックに精通している音楽評論家。まだ中学生だった1969年、TVでザ・ビーチボーイズのビデオクリップを観て、それまで感じたことのない音楽の世界の広がりを感じ、翌70年にはエルヴィス・プレスリーの「NBCカムバックスペシャル」(1968年12月3日に全米ネットNBC-TVで放送された番組「エルヴィス」の通称)が日本で放送され、大きな衝撃を受けたという。
大学に入ると、ミュージシャンを夢見てバンド活動に精を出すが、卒業後は音楽の仕事には就かず出版社に就職。しかし、中学時代にロックンロールの洗礼を受けた萩原さんが音楽のフィールドに“カムバック”するのに、そんなに時間はかからなかった。
「“もっと音楽と密接でありたい”という思いが強くなり、仕事をやめようかどうか迷っていたとき、たまたま大瀧詠一
さんにお会いする機会があったんです。ぼくは大瀧さんのファンだったので、すごく盛り上がって結局9時間ぐらいお話しちゃいました(笑)。大瀧さんの音楽に対する熱いお話をうかがっているうちに、“やりたいことを抑える必要なんてない、自分を信じてやってみればいいんだ”って気持ちになれたんです」
そのインタビューの翌日、萩原さんは会社に辞表を提出。音楽評論家としての活動を開始した。以来、DJ、プロデューサー、作曲家などさまざまなことに挑戦。音楽への情熱は今日も変わらない。
「定評のある曲で、昔は“ダサい”と思っていたものを今あらためて聴くと、すごく良かったりするんですよ。つまり、当時は聴いていた自分がダサかったんでしょうね。受け皿ができてなかったというか。エルヴィスやビーチボーイズは40年近く聴いているけど、今聴いて
もまだ新しい発見がいろいろあります。それが楽しいんですよ。歳をとることで音楽に対して謙虚になりましたね(笑)」
さて、そんな萩原さんのお気に入りのお店は、自宅のある巣鴨の老舗そば店「武蔵野」。知る人ぞ知る名店で常連客も多く、中には毎日同じ時間に訪れるお客さんや、親子二代にわたって通うお客さんもいるという。そして、萩原さん自身も20年以上通い続ける常連客のひとりである。
「料理と音楽は、どちらも流行り廃りがあるもの。でも、どういうわけか、その中にも時代を超えて残っていくようなすごい力のあるものが生まれるんですよね。ぼくはそういうものが好きなんです」
時代性に関係なく、本当に自分に合うものとずっと接していく。それが萩原さんのスタイルなのだ。
この「武蔵野」は、昭和27年創業(手打そばになったのは昭和47年)の老舗そば店。ぼくは、巣鴨に住むようになって以来ずっと通い続けていて、多いときには月に4、5回来ることもあります。最初は知人のすすめで来たんですが、ここのそばを初めて食べたとき、「そばそのものが旨いお店って本当にあるんだなぁ」と実感させられました。若い頃は、そばの味ってそばつゆの味だと思っていましたから(笑)。
ちなみにぼくのおすすめは、車海老とししとうの天ぷらが付いた「天せいろ」。あと、ごぼうやにんじんなどが入った温かいつゆにつけて食べる「田舎そば」もおいしいですよ。
さらに、おつまみもかなり充実していて、しかも平日(祝日を除く月〜土曜日)は夜遅くまで営業しているので、ビールを飲むにも最適。まずはおつまみを食べながらキリンラガー、そして締めに旨いそば。幸せな気分になれますよ。

1956年生まれ。音楽評論家、DJ、プロデューサー、作曲家、ミュージシャンとして、音楽のさまざまなフィールドで幅広く活躍。あらゆるポップミュージックに精通しており、特にアメリカ音楽に造詣が深い。