


今回の「ラガー音楽談議」でお伺いした「ノヴェンバー・イレブンス1111」は、宇崎竜童・阿木燿子夫妻の経営によるライブハウスだった。
店長の青島啓介さんが、このお店に入るために夫妻との面接時、「実は二人が誰なのか分からなくて、すぐ実家に電話して、こんな人たちにお会いしたと話したら、両親はびっくりして……」と話してくれたのだが、それはさぞや驚いたに違いない。
もしマスターが青島さんの親だったならば、電話でまずは宇崎竜童さんがダウン・タウン・ブギウギ・バンドで登場した頃から話をするだろうね。「デビューは1973(昭和48)年、長島茂雄さんが引退した年、白いつなぎを着てサングラスをかけた5人組でデビューした」と。するりとこうきて、続いて「74年『スモーキン・ブギ』がヒットして、翌75年に『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』が大ヒットし、紅白歌合戦にも出場したのだよ」と。で、こう続けるね。「この曲で宇崎竜童さんがニヒルにつぶやく『あんた、あの娘のなんなのさ?』っていうのが子どもたちの間でも流行って、家の近所では、息子に妹を指差され、それを聞かれ『はい、父親です』なんて答える親もいた」と。笑いもとっちゃおうとするがあまり受けないぞと。
そして、ここからは親としてというよりも個人的な感情も入り乱れて、熱弁となる。「ダウン・タウン・ブギウギ・バンドはバラード調の歌が良かったんだ。特に『知らず知らずのうちに』とか『身も心も』とか、これを聴いてな、父さん、たっぷり涙を流したよ。その頃、好きな人がいてな、遠距離恋愛でな、それはそれは綺麗な人だった。でも、なかなか会えなくて。この女(ひと、と読んで下さい)、母さんと知り合う前に付き合っていたんだ。母さんには言うなよ。父さん、もう思い出ぼろぼろだよ。あっそうそう、『思い出ぼろぼろ』って曲は宇崎・阿木コンビで、内藤やすこさんが歌って、76年に日本レコード大賞作曲賞を獲ったんだ」と話すことだろう。

電話を切ったこの父は(マスターすっかりなりきりです)、おもむろに家のCDラックから『山口百恵 ベストセレクション2』を取り出し2曲目の「乙女座 宮」から聴くのであった。で、心のなかでつぶやく。「これは確か新宿2丁目のゲイバー『新幹線ひろし』で初めて聴いたんだ。同時期、田原俊彦の『恋=Do!』なんかも流行っていたな、踊ったな。そういえばサザエっていうゲイディスコもあったな。楽しかったあの頃…」などといろんなことを思い出す。
流れているCDは3曲目の「プレイバックpart2」となり、「馬鹿にしないでよ」と口ずさみ、このへんから飲みたい気分になってきて冷蔵庫に近づく。すぐさま4曲目の「絶対絶命」でキリンラガーの缶ビールを取り出し、「さあさあ さあさあ はっきりかたをつけてよ」と、もう仕事はおしまい。勝手にはっきりと、かたをつけちゃって、今夜も飲もうということになるのであった。