


「ラガー音楽談議」の取材で訪れた広島市中区流町にある「バー冒険王」で久しぶりにバン・マッコイの『ハッスル』を聴いた。マスターは当時のディスコを思い出してしまった。1975(昭和50)年頃がブーム絶頂だったような気がする。マスターは当時大きいディスコへ行くには、まずは小さいディスコで練習してからという友人の誘いで、赤坂にあった<フランス乞食>というところへ通った。
プロ野球で言えば2軍でみっちり自主練習してから1軍へ、という感じですね。そこはまず正面に大きなガラスがあって2軍選手たちは、おおよそ15名ぐらいが横一列になり全員カガミに向かう。その列の後ろに、段々と並列に並びながら踊る人たちが40名ぐらいいる。曲は『ハッスル』『ザッツ・ザ・ウェイ』『アイ・シャット・シェリフ』『ゲット・レディ』などが流れ、2軍選手たちはカガミを見ながら、例えば『ザッツ・ザ・ウェイ』ならば、船を漕ぐように踊るのである。両手でオールを漕ぐように踊るのである。これを踊りといっていいのだろうか?と疑問を持ちながら踊るのである。いいのである、みんなそうしているのだから。
あと踊りで覚えているのは、立ってスケートをするような感じでリズムをとり、ある時は手を後ろにしたり、だらりとしたり、またはリズムをとったりしながら、顔は知らんぷりする。ディスコって顔が難しいです。顔力のある人はバランスが悪いというか、硬いというか、笑っていても変で、とにかく知らんぷりがグランプリということになる。(すまん)
で、たっぷり練習したら晴れて1軍昇格。これは同じ赤坂にある<MUGEN><ビブロス>に行くことを意味する。体調バッチリで行くことになる。(家でもレコードを聴いて練習)
このいずれのディスコも外国人が多いのである。ここでマスター、なぜかアガる。外国人と派手な雰囲気に飲まれる。(2軍は外国人なし、雰囲気地味だった)おどおどする。踊っていてもちっとも楽しくないどころか、「なぜ人は踊るのだろうか?」なんていう疑問が持ち上がる。すぐ帰ることになる。即刻2軍落ち。つらいような、どうでもいいような、でも悔しい思いがあり、また<フランス乞食>へ行く。すると、なんか自信がついた自分がいる。だって<MUGEN><ビブロス>へ行ったんだから。こんな感じだったんですね。1軍の壁は厚かった、とだけ申しあげておきましょう。

ところで、今、密かなブームらしいですね。オヤジディスコ、盛り上がっているそうです。マスターは、積極的に行こうと思わないのは、積極的に誘ってくれる人がいないからなんだけど、もし行くとなったら、踊りよりも、どんな顔をしたらいいか迷います。最近知らんぷりもなかなか難しいんです。目に力が入ってしまい、なんでか? 歳をとると顔にエネルギーが貯まるのかしら。
「バー冒険王」で久しぶりに聴いた『ハッスル』、このときはカウンターでラガーを飲みながらね、「あー、あの頃は…」なんてじみじみしながら、こういう方が今はいいな。ちょっとしゃべり過ぎてしまうけどね。(しゃべり過ぎるのも顔にエネルギー貯まるからか?)河野さん、お世話になりました。