


今回「ラガー探訪ノート」に登場いただいた野沢那智さんは大のクラシック音楽ファン。「あんなにレコード買ってなければプール付きの家ぐらい買えた(笑)」と話してくれたのだが、その声があの野沢那智なのである。当り前だけど、初めてお会いして、生のお声を聞けた、それだけでも感激だ。滑舌がいいばかりではなく、きれいなイントネーション。
「クラシックは、あんまり仕事が忙しいんでヤケクソになってフラストレーションを解消するために聴いたんですね」と相当つぎ込んだらしいのだが、つぎ込んだもののなかでもレコードは小さいほうで、もっともっともっと大きいのがある。
実は野沢さん、25歳で劇団薔薇座を設立し以来劇団運営のため、いろいろと赤字を出して借金を作る。その返済のために声優業を始めたとも言われている。
野沢さんが映画『ダイ・ハード』のブルース・ウィルスの吹き替えをしていることは皆さんご存知かと思いますが、野沢さん、この仕事の依頼があったとき「なぜ、自分か?と。この痩せた身体、細い首、ブルース・ウィルスとは体格が違う。しかもどちらかといったら僕は高音なのに」と。
で、ディレクターの方に聞いたそうだ。すると「いや、そういうことでキャスティングしていません。僕は、あなたがこれまでやってきた薔薇座の芝居は全部観ています。アトリエ公演まで足を運んでいます。あなたはよせばいいのに、まだ29歳かそこいらで3階建ての稽古場を建てて、赤字出して、血みどろになりながら借金返して、利益を度外視してまでも芝居をやって、それなりに新人を送り込んで、あなた自身の精神構造がそれこそダイ・ハードじゃないですか」なのであった。
つまり、とんでもないシチュエーションに何度も何度も放りこまれ、あきらめないで頑張らなくちゃならないっていう気持ちが、野沢さんならわかるということでのキャスティングだったのだ。

何か凄く職人的なモノを作る人たちのいいお話なんだけど、野沢さんはダイ・ハード的な人生を送ってきたということでもあるわけで、マスターは野沢さんのお話を聞いてつくづく、いつも前向きに、自分の道をいかなくちゃと思いましたね。つまりちょっとしたことでめげないで、元気だして、どんなことでもくぐり抜けなくちゃイカンと。世の中にはいい言葉がありますよね。「失敗は成功のもと」。それから「借金も財産のうち」とはよくいったもの。
今夜も、まずはおいしいラガーを飲もうではありませんか! この一杯がどれだけ楽しみをもたらしてくれているか。さぁ夏だぞ御同輩! ますますビールの美味しい季節ではあ〜りませんか!