


「いやー旨かった旨かった」。今回の「味の継承」はかしわのすき焼き。ちょっと煮込まれて醤油と砂糖と松茸の香りに包まれた鶏肉。これにとき卵をくぐらせて、がぶっといった。ビール、ビール、早くビール。お味を想像してみてくださいね。すき焼き味に身の締まった鶏肉の歯ごたえ、キーンと冷えたラガー。のどごしよく、卵のとろーりと砂糖の甘さと醤油味がお口いっぱいに広がり、それをビールがよかったね、よかったねとささやきながらさっぱりとさせてくれる。そして松茸の風味、これまたシャキッとしたタマネギの甘さ。ぜひ作ってみてください。
ところで、「すきやき=うひゃ御馳走だ!」という方々も多いはず。何なんでしょうね、「すき焼き」の魅力って?私も「すき焼き」次の日には決まって学校で「おれんち、昨日の夜すき焼きだったんだぜ」と自慢したものです。「肉は牛だったんだぜ」--聞いている者たちは、これだけでもう、金メダル級のよだれものですよ。
そうそう、肉といえば、ウチによく遊びに来るイトーちゃんは宮城県出身の人で、もう50歳になるかな。お父さんもお母さんも学校の先生で、4人兄弟はすべて年子。で、小学校の頃、日曜日というと決まってカレーライスだったらしいのだが、カレーの中身はたっぷりのジャガイモとニンジンとタマネギとそしてサンマ(身をくずしたもの)だったそうで、イトーちゃん、カレーとはサンマで作るものと思い込んでいた。中学で初めて豚肉入りのカレーを食べたそうですが、今でもときどきサンマカレーを食べたくなるそうです。
さてさて、かしわのすき焼きも、きっと和歌山の紀ノ川辺りの人が、おもてなしで、この料理を作ったのでしょう。客人が来たり、お祭りのときなどに振る舞う。大変な御馳走でしょ。近所で採れた松茸をごっそり入れて、美味しいお酒と一緒にみんなで愉しんだのではないでしょうか。そんなことを考えながら、しみじみとビールをぐびっと飲む。イトーちゃんのことも思い出しながら、もう一杯。こうしてマスターはなぜか、今夜もしあわせになっていくのです。