


東京・人形町の「十四郎」で南佳孝さんは、「ラガー探訪ノート」の取材時間の1時間ほど前にいらして何やら女将と話をしていた。大好きな人形町の情報交換でもしていたのか楽しそうであった。さて、撮影が始まり、佳孝さんはまずは冷えたキリンのラガービールをグラスに注いで、さっと飲み干した。そして、炭火の上には、今回の撮影のために女将が山陰から取り寄せてくれた蟹(解禁前なので冷凍されたものを一尾だけ)、また、松茸、ノドグロなどが並び、「これがビールに合うのだな」と佳孝さんはつぶやきながら、あつあつをいただく。美味しくて嬉しいとハミングが出るんですね。佳孝さんがなんとなく口ずさむ。こんなときのビール、さぞや美味しいのでしょう。
話は多いに盛り上がり、「なぜか田舎なのに凄い旨い中華料理屋があって」などとこれまでコンサートで出かけた日本全国のうまいもん話になった。「最近は、どこへでも行くよ。ステージが終わった後、地元で仲良くなった人たちとそこでしか食べられない料理をたべて飲んで、これが最高なんだよ」と、その笑顔から、いい歳のとり方をしているなぁと思えた。
我々にとって南佳孝さんは、「モンローウォーク」、「スローなブギにしてくれ」「PARADISO」など、都会の雰囲気や気分をいろいろな角度からリリカルなメロディにしたシティ・ポップスの先駆者。歌の雰囲気からして近寄りがたいと思われそうだが、実はそうではない。茅ヶ崎に引っ越して10余年、仲間たちとのパーティにはギターを持って行くことも多いとか。「もっと元気に歌えよなんて言われてね。次の日、家で一生懸命に練習したりして(笑)」佳孝さんはいつも自然体。取材を終え、帰る頃にまたハミング、おいしいラガービールのひととき。あの声もやっぱり昔から変わらない。

