

今井美樹が3年ぶりの新作『corridor』をリリース。シングル曲"祈り"、ドラマ主題歌"宝物"、CMソング"ひとひら"など、ここ3年間の彼女の軌跡に新曲を織り込んだ本作は、シンガーとしての今井美樹の魅力がたっぷりと詰め込まれている。曲の〈風景〉や〈空気感〉を大切にしながら紡ぎ出された歌は、それぞれが短編映画や絵画のようでもあり。その柔らかな歌声は、リスナーの日々の暮らしにそっと寄り添ってくれる。誰もが自然に自分自身に戻ることができる場所、〈今井美樹ミュージアム〉へようこそ。
取材・文: 村尾泰郎/写真:神ノ川智早
―― 3年ぶりのオリジナル・アルバムですが、ドラマの主題歌やCMソング、シングル曲など、いろいろ入っていますね。
そうなんです。わたしは以前からずっとシングルはシングル、アルバムはアルバムで分けて考えるほうなので、今回は今までにない形ですね。もちろん、シングルの曲をないがしろにする気持ちではないですよ。でもその時その時にいちばん向き合って作ってるのがシングルなので、作った時期も作った時の気持ちもそれぞれの曲がメインにあって、アルバムとしてどうやって統一感を出すのか、そこが今回いちばん考えたことでした。
―― そんななかで、どうやってアルバムの道筋をつけていったんですか?
今回のアルバムは、川江美奈子さん(シンガー・ソングライター。これまでにも今井に曲を提供してきた)の曲が11曲中6曲入っているんです。彼女の作品はいつも完成されていて、ガンとして動じない曲なんですね。生きることとか人生についてとか、大きなテーマを歌った曲が中心にありつつ、今回はそういった彼女の大きな歌の間に、ささやかな日常を歌った曲を入れていくことでバランスをとろうと思いました。力強く励ましてくれる曲も、まずサウンドが気持ちよくて体が自然に揺れるような、そんなグルーヴの曲もある。日常のなかに潜んでいる、ちょっとしたことを歌っているんだけど、ピンとくる人には「ああ~、そうよねえ」って思ってもらえるというか。だって、人生っていうのは日常の積み重ねじゃないですか。日常の中にもいろんなストーリーやいろんなドラマがあると思うし、日常こそが私たちの心をさりげなく寄り添わせてくれたり、自分自身の頑になってる心をほぐしてくれるきっかけになったりする。力強く励まされるよりも、「いいじゃん、別に」くらいの、そんな軽い一言が深呼吸させてくれる。そんなこともあるよね......って。

―― それは今井さん自身、生活のなかで実感されていることなんでしょうか。
そうですね。普通に毎日を営めるってことは、本当はすごいことなんだって思うんです。私は父を亡くしたことがすごく大きかったと思うんですけど、やっぱり人生いつか終わっていくわけですよね。あんなに早く彼の人生が終わるとは思ってませんでしたし。そういう意味で言うと、人生何が起こるかわからない、良いことも悪いことも。そんななかで、毎日一生懸命生きている。それだけで褒めてもいいことだと思うんです。お互いに「おお、ようやっとるのぅ」って(笑)。だから、なんでもないような日常の中でも「ありがとう」って言えたり、誉めてあげられるようななことが潜んでたりするんだよ、っていうことを説教臭くなくグルーヴしたかったんです。
―― 今回の収録曲には、"Ordinary Magic"(ありふれた魔法)という、そのものズバリのタイトルの曲もありますね。
"Ordinary Magic"は(川江)美奈子ちゃんが初めて作詞家として参加してくれた曲なんですけど、彼女には今話したようなことをそのまま言ったんです。なにかこう、ちょっとふさぎ込んでる気持ちを抱えてるかもしれないけど淡々と日常は続いている。例えばお散歩するような、そんな日常感のある曲にしたいんだって。どちらかというと情景描写でいいと思ったんです。自分の心情を訴えるっていうよりも風景が見えるような。
1963年宮崎県出身。1986年シングル“黄昏のモノローグ”で歌手デビュー。以降、等身大の歌詞と透明感溢れる歌声で数々のヒット曲を発表、中でも96年のシングル“PRIDE”は160万枚を超えるミリオンセラーとなり、トップ・シンガーとしての地位を確立する。
父親譲りの生粋のジャズ・ファンでもあり、近年ではポップス界のみならず、JAZZTRONIK、島健、大野雄二など、様々なアーティストとのコラボレーションを繰り広げてきた。09年3月に昨年のコンサート・ツアーの模様を収録したDVD「今井美樹Concert Tour 2008」をリリース。また、4月からTFMでレギュラー番組「ラブ ユナイテッド」(全国6局ネット 毎週日曜日20:00〜20:55)がスタート。

2009年11月25日発売
TOCT-26909
¥3,000(税込)
3年ぶりとなる待望のオリジナルアルバムが11月25日リリース! 全編セルフ・プロデュースで紡がれた3年間の軌跡。今井美樹ワールドに不可欠な、シンガー・ソングライターの川江美奈子、岩里祐穂の詞の世界。サウンド・プロデューサーに河野圭を迎え、川江美奈子作曲のシングル“祈り”、“宝物”(NHK 土曜ドラマ「再生の町」主題歌)、“ひとひら”(TOYOTA Isis 「LINK-UP CM」コラボレーション楽曲)に、河野圭、松本俊明の楽曲が彩る全11曲。1曲1曲を丁寧に積み重ねた、3年間の歩みの作品集とも呼べる1枚。ブックレットは豪華24ページ仕様。
