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 ブルースは、ロックやジャズのルーツでもある重要な音楽だ。シンプルだからこそ奥が深く、一度ハマればどんどん引き込まれるはず。しかしその一方、ビギナーにとってはどこか敷居が高いのも事実。興味はあるが、どこから入ってみればいいかわからないという人も少なくないだろう。

 そこでブルース入門のポイントを、木村充揮、近藤房之助両氏に伺ってみた。先ごろ、バンド・クレイジードッグスとして初のオリジナル・アルバム『クレイジードッグス』もリリースした、言うまでもない国内ブルース界の重鎮だ。

取材・文/印南敦史 撮影/鈴木敏也


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―― おふたりの、ブルースとの出会いを教えてください。

近藤房之助(以下近藤) 僕らの時代はレコードが高かったでしょ。だから、一生懸命お年玉を貯めてはレコードを買ってたんです。でも現実的には、ビートルズを買うだけで精一杯だったんですよ。あとはアニマルズとかね。で、そんなことをしていると自然に、ブルースっていう言葉にぶつかるんだよね。それで〈ブルースってなんなんだろうなあ?〉と思って、中学校3年ぐらいのときに中古レコード屋でフレディ・キングを買ったんだよね。

―― そこからずぶずぶと?

近藤 それがそうでもなくて、最初はあんまりかっこいいものだと思わなかったんだよね。でも、気がついたらいつの間にか夢中になってた。きっかけになったのは、オーティス・ラッシュかな。"So Many Roads, So Many Trains"っていう曲があって、強烈だったんですよ。そこから、ヒット・チャートとかまったく興味なくなっちゃったもんね。

木村充揮(以下木村) 僕の場合も、〈3キング〉と呼ばれてたフレディ・キング、B.B.キング、アルバート・キングあたりからですね。あんまり詳しくないけどね。でもレコードを聴くのもいいんですけど、僕はライヴで教わることがすごく大きかったね。高3のときに初めてB.B.キングのライヴを見たんやけど、感じるものの量がレコードよりも全然多い。それで〈まいった〉と思って、〈高3で降参〉(うれしそうな笑顔)。

近藤 (B.B.キングを見たのは)1971年の初来日のときだよね。あれは俺も衝撃的だった。俺はそのころ、バイトをして金を貯めてフェンダーの〈ツインリヴァーヴ〉っていうアンプを持ってたんだよ。でもライヴのときにB.B.キングの機材を見たら、エーストーンの70ワットの小さいアンプなんだ。それなのにものすごい音が出るから、〈機材なんか関係ないんだな〉って感じるものがあった。

木村 そうだね、B.B.はレコードでも感じるものはあったけど、ライヴがすごかった。だからライヴを見た後は、聴き方が変わってきた。みんなそうですよね。スリーピー・ジョン・エステスと一緒にやったことがあるんですけど、あの人、全部Gのスリーコードなんですよ。だから簡単ゆったら簡単なんだけど、真似できへんとんでもないものを感じるんですよ。言葉にできない。だから、本当に感じれるもんは言葉にするもんとちゃうねんなあ。ほんまにね、ゆえない。


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ブルースには、なんともいえん匂いがあるんですよ。それがすごいんですわ(木村)

―― おふたりとも、活動歴がとても長いですよね。

近藤 あっくん(木村氏)はもう、70年ぐらいから日本語に置き換えてやってましたね。でも僕はそのころ、名古屋の〈OPEN HOUSE〉っていうブルースをかける喫茶店の雇われマスターだったんですよ。それであっくんのやってた憂歌団を招聘したりしてたんですけど、自分が音楽で身を立てようなんて全然思ってなかった。匂いつきのパンティ集めるような感じで、ブルースのレコードをいっぱい集めてただけでさ(笑)。でも、それが自然に変わっていったなあ。ブルースを演奏することが楽しくなったんだね。楽しいんですよ、生演奏って。

木村 BREAK DOWN(近藤氏が在籍していたブルース・バンド)にしても、なんともいえん匂いがあるんですよ。それがすごいんですわ。いまは、匂いを嫌う傾向がすごくあるじゃないですか。だけどいい匂いを嗅いだら、なかなか離れへんよ。芋焼酎だってそうだしね。〈芋もなかなかいーもんやな〉って(うれしそうな笑顔)。

近藤 ブルースってさ、自分の半径数メートルの世界を歌ってるだけだしね。

木村 シンプルやし、めちゃめちゃ勝手やから自由になれるんですよね。約束ごとが多すぎたら、今度は遊ばれへんようになるから。

近藤 それだと退屈になっちゃうからねえ。

木村 僕はジェームス・ブラウンが好きでね。踊りたいとか、人のいろんな気持ちを引き出せるところがすごいなあと思ってるんです。しかも誰かの踊りを真似るんじゃなく、〈僕の踊りは僕の踊りやで。君の踊りは君の踊りやで〉。そうやって自分の踊りを踊れることが大切なんですよ。それはブルースも同じだと思うんです。

―― 日本語でブルースをやることについては?

近藤 音楽をやる側から簡単に言わしてもらうと、音楽って伝わる音楽と伝わらない音楽の2種類しかないんですよ。あっくんなんかシカゴ・ブルース・フェスティヴァルに出て日本語で歌ったことがあったけど、そういう状況でも伝わるものは伝わるんだよね。僕も海外でやって、それを感じた。伝わるものは必ず伝わって、伝わらないものは伝わらない。それだけなんですよ。だいたいブルースって、俺が作った音楽じゃないしね。アメリカの音楽じゃないですか。それを手前のものにしてやってるだけだから、むしろ自分が持ってるものを表に出した方がいい。ニューヨークなんかでやったとき、それに気がつきましたね。世界共通の音楽ですから。


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クレイジードッグス

木村充揮と近藤房之助によるこのプロジェクトは、2003年4月に横浜で行われたあるイヴェントから芽吹いた。それまでステージでの接点はほとんどなく、何度か顔を会わせるくらいだったという2人。それにも関わらず、なぜイヴェントに近藤房之助が木村充揮を誘ったのか。そこには、〈おもしろいことができそうだから〉というシンプルな回答があるのみであった。その後二人は、各地でライブを重ね、全国ツアーを行うまでになる。
出会いから30年、そして濃密なステージを共有して3年。この3年の時間を経て、ステージだけでなく、作品の共有……それが『男唄~昭和讃歩~』制作へと繋がっていった。
このアルバムは大手レコードショップを中心にロングラン・ヒットを続け、雑誌「ADLIB」主催の〈アドリブ・アワード2007〉の特別企画賞を受賞。
その後のライヴDVD『男唄~THE 歌謡 SHOW~』、シングル“クレイジー節~昭和讃歩~”のリリース、さらに07年の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉、08年の〈ARABAKI ROCK FESTIVAL〉をはじめ全国各地で数々のライヴ、セッションを通じて日々、互いの音楽性を調和、熟成し続けている。

OFFICIAL SITEhttp://otokouta.com/index.html

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『クレイジードッグス』

2009年7月22日発売
ZACL-9034
¥3,059(税込)

昭和歌謡のカヴァー〈男唄〉シリーズ3部作を経た、日本ブルース界の第一人者、木村充揮と近藤房之助が新バンド・クレイジードッグスとして遂にオリジナル・アルバムを完成!
アルバム『男唄~昭和讃歩~』以来、これまでカヴァー・ソングをモチーフとして07年〈FUJI ROCK FESTIVAL〉、08年の〈ARABAKI ROCK FESTIVAL〉をはじめ数々のライヴ、セッションを重ねてきた2人。熟成した世界観をより表現するために創り上げた、クレイジードッグスとして最初で、そして“男唄”シリーズの集大成。
2人の原点であるBLUESのみならずFUNK色豊かな楽曲あり、ラテン・フレイヴァーなナンバーあり……。昭和歌謡カヴァーももちろん収録。音楽を愛する〈大人〉の皆さんに聴いてほしい一枚。

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