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2010.03.02UP

即興演奏の彼方にの話

先日ふとしたきっかけで、大友良英さんの録音に参加する事になりました。
ずっと憧れていた先輩だけに緊張もしましたが、
とても楽しい時間を過ごせました。
そして大友さんに会ったら無性にこの人の事を書きたくなりました。

その人の名はデレク・ベイリー。

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僕は中学生の頃、本格的にギターを弾くようになりました。
早い人はもっと前から弾くんでしょうね。
僕は子供の頃から楽器に囲まれていたわりには始めたのは意外と遅いんです。
多分その頃、初めて買ったギターマガジンで
ローリング・ストーンズの特集が掲載されていました。
その文中でギタリストのキースとロニーの二人は音もプレイも似ていて
二人でひとつの演奏のような、まるでコレクティブ・インプロビゼーション
(集団即興)のようだと評されていました。

コレ~クテっブぅ?インポロビしょ、、、ン???

中学生の僕は疑問だらけでギターにのめり込み始めました(笑)

それが大学生の頃にはデレク・ベイリーだ、オーネット・コールマンだ
言っているんですから、、、思えば遠くへ来たもんだ(笑)。
僕は大学生の頃、実際は二十歳を過ぎた頃にフリー・ジャズに没頭していました。
むしろ「演奏としてのフリー・ジャズ」に没頭していたのかも知れませんが。
時代はアシッドジャズ全盛期で、かつてのファンキー・ジャズも
サンプリング・ネタとしてもてはやされていました。
僕はいまだにこの手のファンキー・ジャズには食指が伸びません。
それは多分あの頃(90年代)の思いがフィルターをかけているのでは。

、、、話が横道にそれました。

そんな中、マイルス・デイヴィスの「オン・ザ・コーナー」を聴いて衝撃を受け
そこから何故かエリック・ドルフィーやオーネットに始まり
サン・ラ、とだんだんと深みにハマってしまいました。
、、、この辺の話は単体でまた今度(笑)

その流れで次にラウンジ・リザースや
ジョン・ゾーンのネイキッド・シティーに行き着きました。
当時、僕はそんな音を模索してバンドを組んでいました。
アート・リンゼイ、マーク・リボ、ビル・フリーゼルが
当時のお気に入りのギタリストでした。

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ジョン・ゾーンのネイキッド・シティー

、、、この辺もまた今度(笑)

その流れで気がつくと孤高の即興家デレク・ベイリーにたどり着いたのです。
僕はその頃はあくまでもギタリストとして、あるいは弦楽器奏者として、
音楽を聴いていたので管楽器のフリーな演奏は自分の演奏に還元されずに、
だからこそ無心で(楽しんで)聴けました。
前述の三人には揺さぶられましたが、まだ気は確かでした(笑)。
ところが初めてベイリーを聴いたとき、そのあまりにフリーフォームな音形と、
その美しい音色に度肝を抜かれてしまいしばらくギターが弾けなくなってしまいました。
その音はデヴィット・テュードアが弾くピアノにも似た崇高な音だなと当時感じ、
自分が今まで弾いていたのが単なる音階でしかないと落胆したのです。
僕が弾いていたのは即興ではなかったと。
それからベイリーは今でも僕のアイドルです。
もう一人のアイドルのジョン・フェイも折に触れて
音色(トーン)の大切さを説いていましたが、
ベイリーの音にはまさに魂が宿っていると言いましょうか。
それは本人の生き様でもあり、どうしてもジョン・ケージの生き様と
似ているような気がします。そして二人に共通するのがもうひとつ
自由な音程(ノート)である事に頑に固執する点。

そんな頑固に即興家であり続けたベイリーが晩年に残した名演が
「バラッド」と「ブレミッシュ」です。

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『バラッド』と続編『スタンダード』

「バラッド」は即興に生きたベイリーによるスタンダード集。
前述のジョン・ゾーンが提案し自身のレーベルで発売された、
この名作は涙が出るほど美しく狂おしい。何度聴いても泣けてくる(泣笑)!
演奏そのものというよりも、その演奏家の背景が、
あるいは録音している姿が見えてくるようです。
初めてデレク・ベイリーを聴くならこれがお勧めかも知れません。

そしてもうひと作品の「ブレミッシュ」。
こちらは元JAPANのデヴィット・シルヴィアンのソロ・アルバムなのですが
その中核をなすのがベイリーのギター。
その即興演奏にシルヴィアンが詩をのせたシンプルかつ大胆な試みです。
そしてベイリーの死後にその時のセッションのみを収録したのが
「To Play ブレミッシュ・セッションズ」です。
ここでのベイリーもまた素晴らしく何よりジャケットが良いです!
ただ期待も不安も無く座っているギター弾き。
あまりに素晴らしいそのジャケットを肴にどれだけお酒が飲めたものか(笑)!
お酒だけじゃありません、その写真から一曲書いた事も。
「ラスティー・オールド・トレイラー」という曲で歌詞のイメージも
この写真から想起する世界を作詞家に伝えて書いてもらいました。

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『To Play』内部

今日は久しぶりにベイリーの名著「即興演奏の彼方に」でも読もうかな?
と思った矢先、見当たらない。そう言えば随分前から見当たらない。
誰かに貸したまま、、、

「即興演奏の彼方に」は彼方に、、、か。

お後がよろしいようで(泣)。


高田漣

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Macは見た!彼はたまにギターも弾く。

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高田漣(ミュージシャン)
1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田渡の長男として生まれる。14歳からギターを始め、17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター・西岡恭三のアルバムでセッション・デビューを果たす。現在は、スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として細野晴臣、高橋幸宏、ハナレグミ、アン・サリー、畠山美由紀、Human Audio Spongeなどのレコーディングやライヴで活躍中。ソロとしても今までに5枚のアルバムをリリース。2008年には、高橋幸宏、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の6人で「pupa」を結成し、デビュー・アルバム『floating pupa』を発表している。同年、崔洋一監督によるショートフィルム「ダイコン」(小泉今日子主演)の音楽を担当。
【official web site】 http://www.tone.jp
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