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2010.01.25UP

小さな街の話

浅川マキさんが亡くなった。
ボビー・チャールズも亡くなってしまった。
ホロ苦い思い出話でもしてみましょうか。

毎度ばかばかしい話を一席。

キャデラック・レコードの回に少し触れましたが高校生から
大学生になるあたりの時期に浴びるようにボビー・チャールズの
ベアズヴィル・レコードの名盤「ボビー・チャールズ」を聴いていました。
最初に彼の名前を知ったのはザ・バンドの映画「ラスト・ワルツ」のサントラで
バンドのリック・ダンコとリヴォン・ヘルムとデュエットしていた
「ダウンサウス・イン・ニューオリンズ」という曲です。
(何故かこのシーンは映像に残されていなかった。)
その後、ディランやザ・バンド周辺の音楽に触れるうちに気がつけば
ベアズヴィル・レコードというウッドストックの名レーベルに行き着きました。
当時ディランのマネージャーであり策士のアルバート・グロスマンがウッドストックで
設立したこのレーベルにはデビュー当時のトッド・ラングレンやハングリーチャックやら
この手の音楽が好きな方にはまさしく宝の山!
以前書いたカレン・ダルトンの2ndもベアズヴィルですね。

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で、僕がボビー・チャールズに気がついた当時はまだCD化していない上に
中古市場でも高値で取引されていました。少なくとも高校生だった僕には。
ただ僕は運の良い事にまわりに音楽好きの先輩方が沢山いたわけで、
というかそういう大人ばかり囲まれて成長しましたから(笑)

、、、話が横道にそれました。

ミュージシャンの大先輩が幻の名盤「ボビー・チャールズ」を
カセット・テープに録ってプレゼントしてくれたんです。
その時一緒に録ってくれたのがジョン・セバスチャンの傑作ソロ「ターザナキッド」です。
、、、「ターザナキッド」についてはまたいつか。

本当にテープがすり切れるほど聴きました。何度も何度も。
当時の自分の宝物だったんでしょうね。
その後、渋谷系の食指がこの手の音楽に及んだ90年代初頭。
幻の名盤としてこのアルバムもめでたくCD化した、、、
、、、でも、あの時に素直には喜べなかったなぁ。
自分だけの秘密の宝物が無くなってしまうようなそんな喪失感を感じました。
、、、勝手な理由ですね(笑)!
ジェシー・エド・デイビスの「ウルル」とか、それこそカレンの2ndとか、
聴きたくても聴けなかった名盤がこの時期に再発されまくって
沢山おこぼれをあずかっていたのに。

そのおかげで僕が自分の立ち位置を明確に意識し始めた話は
、、、以前に話しましたっけ(笑)?

今日、久しぶりにこの名盤を聴いたら涙が出そうになった。
自然に力まず歌われるその歌声に今までも何度救われた事でしょう。
そこには流行とは違う時間が流れているんだな。
今さらながら気がつきました。

一昨年の事だったか、、、芳垣さんの誘いで新宿ピットインで初めて歌った日のこと。
その前に軽くリハをするので向かいのスタジオ・ピットインに楽器を降ろした後、
最寄りの駐車場を店員さんに聞いたところ
その場にいらした初老の女性が丁寧にしかも適切に教えてくれた。

本番を終えて一息ついたころに店長さんに呼ばれた。
「ご紹介します。浅川マキさんです。」と。
お昼に道を親切に教えて頂いたあの方でした。
今はと言うと、、、
御自分のポスターをきれいにエントランスの壁に貼っている最中でありました(笑)。

「あんた、渡ちゃんの息子なんだって。あんた良いよ。ルー・リードみたいだよ。
NYの感じだね。あんたさぁ、このままフォークなんてやめちまいな!」

僕はその日以来、、、
、、、いやいやいや、
その前からフォークをした覚えはないのです(笑)。
その日に英語の曲を歌ってはいましたが、、、。
でもとっても嬉しくありがたいお言葉でした。
リスペクトを込めてその次にまた芳垣さんのお誘いでピットインに出た際には
この逸話とともにウッディー・ガスリーの曲を歌ってみました(笑)。

当たり前のように消費される音楽がある一方、
ずっとそんな事とは無縁で生き続ける音楽がある。
昔とあいも変らず僕はこうして音について思いを馳せ、
ああでもない、こうでもないと呟いているのです。

ボビー・チャールズ様、
浅川マキ様、
謹んでご冥福をお祈りします。

追記、入稿しようと思っていたら
ケイト・マクギャリルさんもお亡くなりになられたと聞き
茫然としています。

あらためてご冥福をお祈りいたします。


高田漣

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スタジオにて。(撮影:高野寛)

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高田漣(ミュージシャン)
1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田渡の長男として生まれる。14歳からギターを始め、17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター・西岡恭三のアルバムでセッション・デビューを果たす。現在は、スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として細野晴臣、高橋幸宏、ハナレグミ、アン・サリー、畠山美由紀、Human Audio Spongeなどのレコーディングやライヴで活躍中。ソロとしても今までに5枚のアルバムをリリース。2008年には、高橋幸宏、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の6人で「pupa」を結成し、デビュー・アルバム『floating pupa』を発表している。同年、崔洋一監督によるショートフィルム「ダイコン」(小泉今日子主演)の音楽を担当。
【official web site】 http://www.tone.jp
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