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2009.10.14UP

北島敬三 1975-1991 写真展

 先日、東京都写真美術館で開催されている写真展「北島敬三 1975-1991  コザ/東京/ニューヨーク/東欧/ソ連」(10月18日まで)に行ってきた。

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写真が好きな人なら、北島敬三が森山大道教室(ワークショップ写真学校)の2期生で、82年に出版した写真集『New York』により、第8回木村伊兵衛賞を受賞した写真家であることを知っているかもしれない。

 その作風は、特に初期の頃は森山大道譲りのモノクロのストリート・スナップショットが中心ながら、決して単純なフォロワーだったわけではない。ただ70年代ー80年代のコザ、東京、ニューヨークのストリート写真には、森山大道がスナップシューターとしての北島を"白昼の通り魔"と評したように、写真撮影を気付かれたら厄介なことになりそうな被写体や場所はノー・ファインダー(カメラを構えず)ですれ違いざまに撮ったものもかなりあり、その手の写真は必然的にブレやボケが生じたにすぎない。

 そういった一連の写真に焼き付けられた人間の生々しくストレートな欲望や衝動、生活といったものが、時に映画の一場面のようにドラマチックに切り取られているのだが、フィクションの映画と違うのは、どこまでもリアルな人間の業のようなものが、印画紙やインクジェットプリントの中に蠢くように息衝いていることだ。それはまるで人間の内面に潜む情念の澱が滲みやアレとなって写真に表出たような毒々しさがあり、生理的にはあまり見たくない写真であっても、そこに写し取られた非日常や異形なものに対する見る者の本能的な好奇心が刺激され、つい見入らずにはいられない力がある。

 今回の写真展は、何故か突然のようにスナップショットの発表を封印してしまった1991年、崩壊直前のソ連で撮影した一連の作品までをまとめた企画展となっている。それ以後の北島は作風を一変させ、大型カメラにより人物を定点観測する『PORTRAITS』シリーズや、一切車や人が写っていない世界各国の大都会のシュールな風景を切り取った作品群が、世界中の美術館に収蔵されるコンテンポラリー・アートのフォトグラファーとして高く評価されている。

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 実は北島敬三と僕は、同じ中学、高校に通った間柄で、高校一年生の時には同じ写真部に所属していたことがある。当時の須坂高校の写真部は、暗室があることから休み時間などにタバコを吸うための溜まり場のようになっていた時期があり、時々先生に見つかっては停学になったりする友達が何人かいた。僕はそんな写真部にただ籍を置いていただけで、作品発表会のようなものにも確か一度しか出展したことがないのだが、敬三はその頃からかなり真剣に写真と向き合っていたように記憶している。
 
もちろん当時、地方の高校生にとってプロの写真家になることなどリアリティのない夢物語に過ぎなかったわけだが、当時の写真好きの高校生なら写真雑誌が全盛期だった当時のスター写真家、森山大道や荒木経惟などに憧れていたことは間違いなく、敬三が写真家になるという10代の頃からの夢を叶えたのだから尊敬に値する。それもいわゆる商業写真家ではなく、現代アートの分野で評価されているのだから価値がある。
 
 高校卒業後、特別親しい友人というわけではなかった敬三とは、時間を作って会うような機会は一度もなかったが、偶然に2度ほど表参道の駅でバッタリ会い、立ち話しをしたことがある。それがどのくらい前だったのか記憶が定かではないのだが、少なくともあれから10数年、いや20年近く経っているかも知れない。ただその時の敬三は、高校生時代とほとんど面影は変わらず、少し落ち着きの無い忙しい話し方が相変わらずだったことを覚えている。今回の写真展に展示されている2枚の写真の中にいる25歳当時の彼と対面し、懐かしさと共に久し振りに一度ゆっくり会ってみたいと思った。

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保科好宏
(ロック評論家/コーディネイター)
長野県須坂市出身。著書に『ロック人名辞典』(共著/音楽之友社)『ザ・フー・ファイル』(監修/シンコー・ミュージック)などがある。趣味はロックと現代アート。
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