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2009.07.22UP

「バンクシー・サマー・ショー in BRISTOL BRISTOL MUSEUM VS BANKSY」第3回

このところ、8月14日(金)から25日(火)まで渋谷のBunkamuraギャラリーで開催する
グラフィティ/アーバン・アート展の準備に追われ、数日後にアップの予定が3週間ぶりになってしまいました。
申し訳ない。
そこで今回は英ブリストルのバンクシー展でも、最も遊び心とイタズラ心に溢れた、
常設展示作品に紛れ込ませた作品の話を中心に紹介したいと思います。


考えてみれば、アート・テロリスト、バンクシーの名前を一躍有名にしたのが、
メトロポリタン美術館や大英博物館などに自分の作品を勝手に展示して帰ってくるという
ゲリラ的なパフォーマンスだったのだから、この手の作品はレベルが高く面白いのは当たり前。
何しろ物によっては数時間でバレてしまったものから、1ヶ月以上も気付かれずに展示されて後々話題になった
作品もあるのだが、中には洒落の分かる美術館側がそのまま継続して展示を決めたケースもあるから面白い。


こういったゲリラ展示に込められた意味などについては、またゆっくり考察したいと思っているのだが、
いずれにしてもこれは単なるイタズラというのではなく、美術史上、これまで誰もやらなかった極めてオリジナルなパフォーマンス・アートだと高く評価している。


それはともかく、ブリストル美術館での展示写真をゆっくりご覧いただきたい。
まずは斜めに展示された湖畔の風景画から水と船が絵からはみ出して流れ出ている旧作の騙し絵。
今回、この騙し絵タイプの作品はいくつか出展されているが、UFOの作品、ミレーの「落穂拾い」のパロディ、
写真では判りにくいものの、額フレームにまで立体の蝿がたかっている静物画など、
額からはみ出た表現手法が実に馬鹿馬鹿しく愉しい。

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もちろんこれらの仕掛け/騙し絵は、常設展の中に入っていても瞬時に判るが、
中にはついうっかり見過ごしてしまいそうな作品もあるから面白い。

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例えば女性のヌードと天使の作品など、鏡の中の顔にピエロのメイクが施されているのに気付かなかったら、
何も疑問に思わずそのまま通り過ぎてしまうだろう。

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同様に時代の古い風景画の中にうち捨てられた車があったり、看板を描いていたり、時代考証的、
あるいは常識的にあるはずのない異物が紛れ込んでいるというイタズラ心が愉しい。


これらクラシカルな油彩スタイルの作品にはいくつか技法的なバリエーションがあり、よく観察すると
いろいろ見えてくる。
例えばアイデア優先の騙し絵のような作品に多いのは、よく美術館の売店などで売っている複製画を元に
加工を施したり、描き加えたりしたものもあれば、全て油彩画として描いた作品もある。
いずれにしても描き加えたものでもその境目がまったく判らなかったり、すべて描いた作品でも、
中世や19世紀の絵画のようなその時代特有の雰囲気のようなものまで再現する
破格のテクニックに驚かされる。
もしバンクシーが贋作画家なら、鑑定家をも欺く精巧な有名画家の新発見作品や
似たようなレプリカも簡単に描けるのではないかと思えるほど、多彩にして確かな技術を持っているのは、
精緻なドローイング・デッサンも含めて作品を見れば判る。


そして今回の作品の中で一番の個人的なお気に入りは、
ダミアン・ハーストとのコラボレーション作品『Improved Spot Painting』だ。

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この120cm X 80cmのキャンバス作品は、ハーストのトレード・マークとも言えるカラー・ドットのモチーフに、
バンクシーのトレード・マークでもあるネズミがドットの壁面を塗り潰している遊び心溢れる図案が愉しい、
ハーストXバンクシーのチームで共同製作した2点の作品の内の一点だ。
このサイズのハーストの作品は安くても5千万円から6千万円程度はするから、
このコラボレーション作品の値段も推して知るべしだろう。
そしてこの作品のクレジットがまた面白いので、写真をご覧いただきたい。

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というわけで3回に分けてお届けしたバンクシー回顧展リポート、楽しんでいただけましたでしょうか?
次回は、ブリティッシュ・アート史上、初めてと言っていいほど一大ブームとなっている
バンクシーを中心とするグラフィティ/アーバン・アート・ムーヴメントについて考察してみたいと思う。

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保科好宏
(ロック評論家/コーディネイター)
長野県須坂市出身。著書に『ロック人名辞典』(共著/音楽之友社)『ザ・フー・ファイル』(監修/シンコー・ミュージック)などがある。趣味はロックと現代アート。
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