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2010.02.19UP

#116 小田島等「ビートルズの歴史は、〈1人の人間が生まれて死んだ〉縮図のよう」

●『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』はいつか引用したいと思っていた

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小田島等(自画像)

――09年に行われたローズ・レコードのイヴェント、〈東京360分〉で、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』をモチーフにしたライヴ・ペインティングを描かれましたね。あれは最初から『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』でいこうと決めてたんですか?

とても特別なアルバムじゃないですか、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』って。イギリスで22週1位でしたっけ? いつかずっと引用してみたいなと、テーマとして拝借したいなと思ってたんです。で、今回、ローズの人が大集合ってことで、ちょうどピッタリなんじゃないか?って曽我部(恵一)くんに話したら、「それ、いいじゃない」ってなって。


――当日は思いつくままに描いていった?

そうですね。特にイヴェントに出てくる人を全員入れなくちゃいけないとかも考えないで。曽我部くんらしき人とがいたりして、楽な感じで。そういえばスキンヘッドの人が話しかけて来てね、「オレを描け」って言うから描いたんですよ。出演者だって言ってるんだけど、あの人、いったい誰なんだろう?(笑)

――人間以外のものもいろいろ参加してますね。例えばこれなんて......。

河童ですね(笑)。河童とかはにわとか宇宙人とか気になるんですよ、土偶、天狗とか地蔵もやっぱ気になる。あとハンマーヘッド・シャーク(シュモクザメ)も。


●レコード・ジャケットに感じる、ビートルズの意地

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〈東京360分〉のイヴェント中に描かれたイラスト

――そういえばオリジナルのアートワークには福助がいましたよね(笑)。オリジナルのアートワークに関しては、やはり思い入れは強い?

もう、ピーター・ブレイク(『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のアートワークを手掛けたイギリスのポップ・アート界を代表するアーティスト)が大好き過ぎてですね。それで、懐かしい話ですけど。僕が中学の頃、87年にポップ・アート展っていうのをやったんですよ、新宿の小田急百貨店で。それでブレイクの作品を初めて観ましたし、ほぼ同時期に銀座の西村画廊でのピーター・ブレイク展も観ました。そこはリチャード・ハミルトン(ピーター・ブレイクと並んでイギリスのポップ・アート界を代表し、ポップ・アートを定義したアーティスト)も扱っている画廊です。この二人が好きだとビートルズもくっついてくる。

――ハミルトンといえば『The Beatles(ホワイト・アルバム)』のアートワークを手掛けてますね。

あれって、ポールがリチャード・ハミルトンに「お願いしたい」って言ったら、リチャード・ハミルトンが「自分でやればいいじゃないか」って言ったらしいですね。「白いジャケットにしたらいいじゃないか」って。その時、リチャード・ハミルトン以外にも何人か候補がいて、それぞれにラフを作らせたっていう話もあるんですけど、それがどの作家かっていうのは発表されていない。エデゥアルド・パオロッツィ(ポールの『Red Rose Speedway』のデザインを担当するポップ・アートの彫刻家)かなと睨んでいるんですけど。

――ビートルズがレコード・ジャケットに美術家を起用したことは大きなことだったと思いますか?

そうですね。それってポールのある種の意地みたいなのもあるんだと思うんですよ。ほら、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の成り立ちって、ビートルズが西海岸のビーチ・ボーイズのところに遊びに行って、オーケストラ楽器を使ってロック音楽をレコーディングしているのを見て、「これはヤバい!」っつって急遽数か月で『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を作って先に出しちゃったって経緯があるじゃないですか。そういうことも含めて、イギリスから導火線に火がついたポップ・アートっていうのを、しかもアメリカン・ポップ・アートより先に誕生してるものを、ビートルズってものに流入させようとポールが閃いたんじゃないかなと。まあ、そんだけ暴走したら、ジョンもなんとなく萎えるわなっていう(笑)。

――やっぱり、ビートルズとアートを繋いだのはポールなんでしょうか。

きっとポールかもしれない。毎晩どこかでパーティやってたでしょうからね、スウィンギング・ロンドンの頃。ポールがポップ・アートの人たちに話しかけて、「ジャケット作ってくれないか?」って言ったりしてる。その事実がアート・マニアからしたら〈それって、どんな様子?〉っていうのがあるんですよ(笑)。〈電話で言うのかな?〉とか〈パーティとかで事前に会ったりしてて、徐々に親交を深めていって頼んでるのか?〉とか、その辺のことがこれまであんまり語られてない。

――確かにその舞台裏って気になりますね。

ニュー・オーダーとピーター・サヴィルなんかは、ああいうふうにミニマムにヴィジュアルを作る人と音楽家が関係していく元祖として、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』や『The Beatles(ホワイト・アルバム)』を意識していたかもしれないですよね。この二枚のやり方を、もっと贅肉を落としてやっていったらどうなるんだ?っていうのを、UKロック・シーンでやったのかもね。ピーター・サヴィルはハミルトンとブレイクの影響が確実にあるでしょうし。引用してる作品もありますよね。音楽にまつわる英国のデザインの歴史って、多分すごいことになってると思います。


●ポールの一言に「ありがとう」と言いながら一人で泣いた


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DVDとしてリリースされた〈東京360分〉のパッケージ

――そもそも小田島さんとビートルズの出会いはどんな感じだったんですか?

やっぱり桑田佳祐ですよ。小さい頃からサザン(・オールスターズ)を聴くじゃないですか、「ザ・ベストテン」とかで。で、そのうちKUWATA BANDのライヴ盤かなんかで、桑田さんが"Hey Jude"を歌ってて。そのジャケットをスージー(甘金)さんが描いてたりして。その頃は宝島キッズだったから、スージーさんが好きで、しかも子供の頃からサザン聴いてたから。すごい合流点だった。中身で"Hey Jude"を歌ってるから、「ああ、これすごい良い曲だ」と思ったんです。

――そこからビートルズを聴くようになった?

中学生の頃に学校でビートルズとか歌わされるでしょ? それがなんか道徳の匂いがしてイヤで。あんまり本気で聴けなくて。それだったらマドンナのほうが良かったし。だからその後もビートルズ聴くよりも、キンクスとかボンゾズ(・ドッグ・バンド)とかラトルズ,10ccなんかを聴いて。神様と目が合うの怖いから、わざと延々遠周り(笑)。

――あえてマニアックな脇道を(笑)。

そう、脇ばっかり行って。お弁当なんかでもマカロニとかを先に全部食べちゃうんですよ(笑)。好きだから仕方がない。

――トンカツとかより、まずマカロニ(笑)。

マカロニ、面白いじゃないですか、食感といい、穴開いてるし(笑)。特殊ですよ。「ウルトラマン」見ててもウルトラマンの活躍は見てないですから。怪獣ばかり。ダダとかブルトンとかヒッポリト星人、ヤメタランスとか。

――アート系モンスター(笑)。じゃあ、ビートルズを本気で聴きだしたキッカケってなんだったんですか?

アンソロジーが出た頃ですね。曽我部君が「とにかく聴いてごらん。ヤッバいから」っつって。それでアンソロジー、ビデオ、本、その時、出てたものをいっきに全部買って、観て聴いて読んで、もう、感動。本読んで泣いた。最後のページのポールの一言、「僕たちは友達なんだ、これは全部人間関係なんだ」って書いてあって、嗚咽して泣いた。初めて本で泣いたかもしれない。一人で部屋で泣きながら、なんか「ありがとう」って言ってました(笑)。

――では最後に小田島さんから見てビートルズの面白いところって?

だいたい面白いんですけどね。縮図ですよね。1人の人間が生まれて死んだ、みたいな感じがありますよね。後半おじいちゃんみたいになっちゃうし(笑)、全員ヒゲもじゃもじゃになって、枯れの演出もあり。あれってザ・バンドの影響もあるのなか?

――最初は初々しいアイドルだったのに、気がつけばヒゲもじゃヒッピーに。

そう、途中すごい実験もして、最後は初心のロックンロールやブルーズへ戻る。だって"Let It Be"って、確か一番最後にジョンが「これでオーディション受かったぜ」って言うんですよ。なんかそれって、輪廻転生みたいな感じで、輪になってる。

取材・文/村尾泰郎


小田島等(おだじま ひとし)
イラストレーター/デザイナー

1972年東京生。桑沢デザイン研究所2部卒。95年よりCDジャケットや書籍のデザインを多数手がける。その一方で、音楽雑誌を中心にマンガやイラストを描く。著作漫画に「無 FOR SALE」(晶文社)、古屋蔵人、黒川知希との共著に「2027」(ブルースインターアクションズ)、監修本として「1980年代のポップ・イラストレーション」(アスペクト)BEST MUSICとしてCDアルバム『MUSIC FOR SUPERMARKET』(Sweet Dreams)をリリースしている。2010年4月には過去の仕事を集成したデザイン&イラストレーション集を、ブルースインターアクションズより出版予定。

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