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2008.09.03UP

落ちこぼれの中学生、大島渚の第一回監督作品に出演

asada_nagisa.jpg さて中学生の僕の日常生活はどうだったかというと、月曜日から土曜日までは当然学校に通っていた。学校の授業にはきちっと出ていたがその頃の学校生活についての思い出は、部活動の切手趣味クラブの会合と軟式野球部の練習以外はあまりない。といっても当時学校の裏手(白金八方園との境目)で土器の発掘のまねごとをやったことや、当時まだ残っていた木造3階建ての古い校舎の探検をやったことは覚えている。

 授業に関してはなかなか面白い先生がいてそれなりに面白かったのだが、いかんせん勉強嫌いで遊び好きという性格だったので、宿題だけはやっていくが家で勉強などはしたことがなかった。当然勉強はそっちのけで、ほとんど毎日音楽のノートの整理とか(FENを聴いて書いたメモの整理)、テレビ番組のプロマイド請求のハガキ書き(当時は外国のテレビ映画の主役のプロマイドを請求すると送ってくれた)、映画の試写会の応募、また音楽番組へのリクエスト等を先生の目を盗んでやっていた。

 中学校は小学校みたいに勉強しなくてもそれなりの成績がとれるほど甘くはなく、当然成績はどんどん下がっていった。そして2年の中間試験の後に親が呼び出されて、お宅のお子さんは知能テストの成績は良いのですが、学校の成績が良くないと言われて帰ってきた。知能テストでは上位にランクさせていたのでやれば出来ると言うことだったのだろうが、学校の成績は50人くらいのクラスで40番前後だったから親も驚いてどうにかしろと言ってきたのだ。仕方がないので、次のテストはかなり真剣に勉強してクラスで10番くらいになった。それでやれば出来ると言うことを親と先生に知らしめることができたのだが、中学校の勉強は前のことが分っていないと次のことが理解できない仕組みなので、だんだん授業についていけなくなって、落ちこぼれの生徒になっていった。

 そんなある日、職員室に呼ばれたのでまた成績のことかなと思って暗い気分で行ってみると、そこには松竹の助監督の田村さんという人がいて(この人は田村猛さんで大島渚ほか多くの監督と脚本を書いた人で、ご自分でも監督をしていたと思う)、次の映画に出てもらう子供を捜しているということだった。何がなんだかわらないうちに、銀座の歌舞伎座近くの旅館に行くことを約束させられた。今考えると学校がなぜこんなことに協力したのかわらないが、落ちこぼれの僕としては学校が欠席を認めてくれたのだから、喜んでその旅館に出かけて行って出演を承諾してしまった。ただ親父は相当怒ったみたいで、学校に抗議をしたらしい。それに僕にもお前はどうなんだと聞いてきた。でも学校が休めるということで、映画のことなんか何もわからず僕はやりたいと親父に言って、最終的に親父の許可が出た。

 映画は当時27歳の大島渚の第一回監督作品『鳩を売る少年』というタイトルで(公開時には『愛と希望の街』というタイトルに変わっていた)、20人くらいの中学生が集められたと後で聞いた。監督の大島渚さんとの旅館での面接の後、松竹の大船スタジオでのカメラテストをするということになった。その時点で候補者はすでに5、6人になっていたようだ。松竹大船撮影所に行って撮影所を見せてもらい、その後にカメラテストを初体験。そしてなんと最後の3人の候補に残ってしまった。最初は学校が休めるということで嬉しかったのに、だんだん不安になっていった。ほかの子供達はほとんど子供劇団に入っているような子供たちで、みんな真剣で演技もうまく、僕のように学校が休めるからなんて了見の子はいなかったのだ。

 結局、最終的に主役は藤川君という少年に決まった。ああ良かったという思いでいたところ、僕には少年Aと言う役が振られて、映画に出ることになった。それに一言だけだが台詞もあった。多分いくつかのシーンに出たのだろう京浜工業地帯で行われたロケにも何回か参加した。映画が完成して銀座の松竹本社での試写会でその映画を観たが、一瞬だが画面に出てくる自分が浮いているような気がして、観ていて辛かった。後で親父が、「浩はあの経験があったから今のような仕事を選んだのだろう」と言っていたが、この映画の経験は僕にとってはほぼ一月間の楽しい体験でしかなかった。その後の僕の生活はまた音楽と乗り物へと戻っていった。


[近況メモ]


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Tom's Cabinからエイモス・ギャレットのCDを発売しました。エイモスのライフワークともいえるパーシー・メイフィールドのトリビュート盤です。各メディアでも絶賛してもらっている本当に素晴らしいアルバムです。ギタープレイだけでなく渋い歌声とパーシーへのレスペクトが味わい深い秋の夜にお勧めの1枚です。

http://www.toms-cabin.com/

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麻田浩(ミュージシャン)
1944年、横浜生まれ。63年明治学院大学入学後、マイク眞木、重見康一、渡辺かおる等とMFQモダンフォークカルテットを結成。カレッジフォークを代表する人気バンドとなる。自身の音楽活動のほか、外国人アーティストの招聘やコンサートのプロデュース、日本人アーティストの海外進出を手がけるなど幅広く活躍。プロモーション会社「トムス・キャビン」代表。
【TOM'S CABIN PROMOTIONAL WORKS】 http://www.toms-cabin.com
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