編集者魂が手に入れたロックからの贈物
アンコールを終えて予定の演目がすべて終わると会場に明かりがつき、その合図とともに床を踏み鳴らしていた観客はぴたりとアンコールの催促をやめて静かに家路につく……いつごろからだろうか、ロックのコンサートがこんなにお行儀よくなったのは。「編集者としての始まりが、ロック黄金期の始まり」だったという著者は、そんなお行儀のよさとはかけ離れた、ファンもレコード会社もメディアもプロモーターもまったく洗練されていない、ロック原始時代とでもいうべき状況から手さぐりで日本の洋楽市場を切り拓いてきたパイオニアの一人だ。
洋楽専門誌『ミュージック・ライフ』の名物編集長として活躍した著者だが、その編集部在籍時代は、発行部数が2万部前後だった60年代末から洋楽ブームに乗って20万部を誇るお化け雑誌にまで変貌を遂げる80年代までとピタリと一致する。著者はあくまでも控え目だが、その成長を支えたのは、取材困難なビッグアーティストたちに果敢に体当たりしていく著者のプロフェッショナリズムと多くの読者に楽しんでいただきたいというサービス精神にほかならないことが、本書を読むとよくわかる。
そうした編集者魂への贈物として著者が手にすることのできたレッド・ツェッペリン、クイーン、エリック・クラプトン、サンタナなど、数々のロック・スターにまつわるそれぞれのエピソードはすこぶる面白い。あの時代を過ごした者にとっては「ああ、そうだったのか」と謎解きをされるようなゾクゾクとする楽しみがあるだろうし、また、同時代体験を逃した者にとってもきっと、音楽への愛着がさらに増す興味深い話であるに違いない。

