Tune In 鈴木博文
PROFILE
鈴木博文
1973年より、松本隆らとムーンライダーズ(オリジナル・ムーンライダーズ)として活動を始める。76年に実兄・鈴木慶一に誘われ、ムーンライダーズに参加。現在も活動中。ソロ活動も精力的に行い、自身のインディ・レーベル(第一期)メトロトロン・レコーズから、87年から20年間に14作のソロアルバムをリリース。2006年、同レーベルを再始動させ、このたび、9年ぶりとなるアルバム『凹凸』を発表。作業の殆どを、羽田にあるプライベート・スタジオ、湾岸スタジオにて録音。
ALBUM
『凹凸 -おうとつ-』
noteron-1005 2900円(税込)
OFFICIAL SITE
Metrotron Records
http://metrotron-records.com/

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―― たとえ話や寓話的な世界なのに、歌詞がすんなり入ってくるのは、羽田界隈というエリアに絞った定点観測だからなのですね。自身のことを解り易くプレゼンテーションする気がないからこその、普遍性がある気がします。
本当の自分のことなんて書けない。でも、本当じゃないことも書けない。だから自分の見た光景のパズルだったり、少しだけ自分がいたり。でも、僕がその光景を見てどう思ったかも書かない。それを感じてほしいから。
―― ハードボイルド小説のようですね。事件は起きるが、主人公の思いは書かない。
書かない。そこを感じてほしい。
―― このアルバムの深みはご自身のインディ発だからこそ出来たと思います。普通レコーディング・アーティストはレーベルやマネジメント、楽曲出版社や色々な人の意見を聞いて、ポピュラリティに近づけますが、このアルバムは歌謡曲、ポップスになりようがない生まれ方をしたんだな、と思う。
オルタナティブなポップスになるだろうね。昔はスタッフに作品聴いてもらって、自作コンペでふるいにかけて、なんてのもやって、多いにめげたこともあるよ(笑)。でも、僕には幸運な事に湾岸スタジオという場があったから。考えてみると、最初から、そういう音楽制作を志向していたのかもね。パーソナルな感じで行きたいっていう。
―― それが逆に今の、100円ショップか専門店しか残らないと言われる時代感とスィッチ合ってる気がします。
30代や40代の人とか、そういう姿勢に入れ込んでくれる世代っているよね。そこからでも良いです。何か、聴くきっかけになってくれれば。
―― 第一期と現在の第二期メトロトロン・レコードの違いは?
第一期は、ヨーロッパでもチェリーレッドやクレプスキュールのような、似た者同士が集まったレーベルが盛んで、僕も、新人の輩出やプロデュースにも興味があった。第二期は、自分のことしかやってない。
―― インディ・レーベル、パーソナル・レーベル。若いアーティスト達のあこがれでもある。
流行ってるよね。作品を出す事は好きだからバンバン出すのは簡単だけど、活動そのものは、地味ですよ(笑)。通販の発送とか、やってますよ(笑)、メールが来て、封筒にガムテープ貼って、よしよしって。今回は特に通販限定のオンライン・シリーズを繰り返して反響を感じつつ制作と平行させたし。社会から自分への評価がダイレクトに来るのがわかる。会社にいると解らない事の方が多いでしょ。けど、解り過ぎるのも良くないなあ、とも思う。そのサジ加減が、セルフ・プロデュースなのかもね。

インタビュー中で博文氏が語るように、70年代の終わりから、ヨーロッパ各地では、パンク〜ニューウェイブ系アーティスト達が、より自由な創作の基地を求めて、インディ・レーベルを契約先に選ぶ風潮が強まる。中には、〈ラフ・トレード〉のザ・スミスや、映画にもなった〈ファクトリー〉のニューオーダー、ハッピー・マンデーズのように大ヒットとなるケースもあった。博文氏が当時嗜好していたロンドンの〈チェリーレッド〉や、ベルギーの〈クレプスキュール〉などは、後にネオアコとよばれるジャンルの創生に寄与し、現在でも若いファンを生み続けている。そして日本では、それらのムーヴメントを見据えた日本のメーカーによる“大会社内インディ”も80年代にはあり、兄の慶一はメジャーの枠の中で〈水族館〉というインディも運営していた。そして、現在、日本は大インディ・ブームであるのはご承知のとおり。きっかけは80年代からのアメリカン・パンク・バンドによる何度目かのインディ・ブームに触発されたハイスタンダードや、モンゴル800などのDIY精神第一!のパンク系からであったが、現在では、元ナンバーガールの向井秀徳が新グループ、ザゼンボーイズの活動基地として立ち上げた〈matsuriスタジオ〉、曽我部恵一が下北沢を拠点に開始した〈ローズ・レコーズ〉、スクービードゥーの〈チャンプ・レコーズ〉など、メジャーが喉から手が出るほどのクラスの売り上げのアーティストが、インディ・レーベルを自ら立ち上げている。そして、近年の日本のポップス・シーンでのインディの傾向は、博文氏の〈メトロトロン〉と同じく、ワン・アーティスト、ワン・レーベルである点。ヒットは狙いたい。けれど、自分達のペースで、誰の命令も受けずに成功したい。この傾向は、CD不況と同タイミングでこれからますます盛んになるだろう。
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