浅草は、地元に住むオーナーバーテンダーの個性が息づくバーの宝庫だ。1987年にオープンしたジャズバー「バー サムシン」も然り。オーセンティックバーながら、オーナー大澄慎一さんの個性が息づく、ジャズファンならず、オーディオファンをも魅了する店である。
米松の一枚板のカウンター、こだわりのシングルモルトが整然と並ぶバックバー、柔らかな照明と、雰囲気はオーセンティックな大人のバーそのもの。しかしバックバーに置かれたモルトのカスク(樽)が異彩をはなっている。実はこれ、オーナーお手製のスピーカーなのだ。
「ホワイトオークの樽は中で音が乱反射し、音色がとてもいいんです。スピーカーの直径は8cmですが、これは人間が口を大きくあけた時のサイズに近い。ソフトなボーカルの曲を聴くのに一番適していると思います。1本何百万円もするスピーカーを持っているオーディオ愛好家のお客様が、よくこれほどの音がでるねえと誉めてくださるんですよ(笑)」
店ではレコードとCDを計5000枚ほど所蔵。アン・バートンなど白人のボーカルものやピアノトリオなど、静かなジャズがこのスピーカーから流れる。ウイスキー樽から響く音は壁や天井にうまく反響して、さながらホールにいるかのような臨場感だ。ちなみに音を楽しむための特等席は右から4番目のシートだとか。
場所柄、落語家などのゲストも訪れるという。浅草の香りをほんの少し感じつつ、静かで粋な大人の時間を過ごせる一軒だ。
取材・文/高橋かおり 写真/関根則夫
1. 6メートルもの一枚板のカウンターに10席のみ。店名はブルーノートのレコード「somethin’ELSE」から。
2. アナログらしさを引き立たせる真空管アンプ。5000枚ほどのレコードとCDを所蔵。リクエストだけでなく、持ち込みもできるのがうれしい。
3. 演奏楽曲とプレイヤーの人形がシンクロして動き、アーティストの演奏を再現するリトルジャマー。店内の一角に置かれ、時々奏でさせるという。
4. シェイカーを振るのは、オーナーである浅草出身の大澄慎一さん。趣ある音色を放つウイスキー樽を改造したスピーカーは手造りだそう。
5. カルバドスをベースにした大人のカクテル「ジャック・ローズ」1500円、「チョコレート」500円。つまみはナッツ、チーズなどが中心。
BAR SOMETHIN’
東京都台東区西浅草2-19-1
03-3847-0479
19:30~翌2:00
日曜・祝日
チャージ700円


