四谷にある『マヌエル・カーザ・デ・ファド』は、ポルトガル語で“ファドの家・マヌエル”という意味。その名のとおり、ファドのライブを定期的に開催する、日本では希少なレストランだ。ボーカル、ギターともにマイクを使わず、生音で勝負。間近で聴くファドはゾクゾクするほどの迫力で、感情に訴えかけてくる。40~60代の客が多く、仕事帰りに何度も足を運ぶリピーターも多いという。
ライブの前にも、楽しみが用意されている。ポルトガルの家庭料理だ。素材の持ち味をいかしたポルトガル料理は、ファドと同様に日本人好み。魚や肉、野菜をバランスよく食べるのも、日本人に似ている。この店では、手間を惜しまず丁寧にダシをとることで、現地の味を丹念に再現。見た目は地味だが、食べるほどにじわりと染み入るやさしい味で、確かな実力を感じさせてくれる。
ポルトガルは、隠れたワイン王国でもある。リストにはポルトガル産ワインが100銘柄以上揃い、ワインセラーには500本以上が待機するなど、圧巻の品揃え。作家・壇一郎に愛されたダン地方、果実味豊かなアレンテージョ地方など、地域ごとの個性を備えたワインを取り揃えている。スターターには若々しい風味の「フィーニョ・ヴェルデ」が、食後には甘口のデザートワイン「ポルト酒」がおすすめだ。
パン、カステラ、タバコなど、ポルトガル語を起源とした日本語は多い。初めて聴くファドや初めて食べるポルトガル料理に懐かしさを覚えるのも、単なる偶然ではないだろう。日本からはるか遠くにありながら、数々の共通点を持つ国、ポルトガル。その不思議な出会いを楽しみたい。
取材・文/渡辺裕希子 写真/関根則夫
1. 天井が高く、地下1階とは思えない開放感。テーブル同士の感覚も広く、ゆったりと食事やお酒が楽しめる。
2-3. リスボンとポルト、2つの街をテーマにしたアズレージョ(タイル画)やポートワインのポスターが飾られ、異国情緒たっぷり。テーブルに並ぶ食器も、すべてポルトガル製だ。
4. 12弦のポルトガルギター。ポルトガルでは“ギターラ”と呼ばれ、独特の形は「涙の雫を表している」ともいわれている。
5. ポルトガルの定番料理『海の幸のリゾット』2890円。エビやムール貝、アサリ、スズキなど魚介たっぷりで、スパイスのきいたトマトソースが食欲をそそる。ポルトガルワインはグラスが880円~、ボトルで4000円~。
マヌエル・カーザ・デ・ファド
東京都千代田区六番町11-7-B1F
03-5276-2432
11:30~15:00(LO14:00)、18:00~23:00(LO22:00)
無休
ファド・ライブのミュージックチャージ2500円~3000円(月1~2回開催/1日2回)


