
7月25日、26日、27日と新潟県苗場スキー場で開催されたFUJI ROCK '08に元ニッポン放送相談役亀渕昭信さんと音楽ライター保科好宏さんが参戦。昨年末のレッド・ツェッペリン再結成コンサートに続く2人の対談が伝える“大人のロックフェス・リポート”
保科好宏(以下H): 意外にも亀渕さんは、フジロックは今回が初体験とか。
亀渕昭信(以下K): 僕の野外フェス経験っていうのはすごく古くて、観客としては1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルが最初。スタッフとしては、1971年の箱根アフロディーテかな。だから(フジロックの)グリーン・ステージでちょっと霧がかかると、あっこれは箱根アフロディーテみたいなんて思ってしまう。最近はずっとロッキン・オンとニッポン放送が一緒にやっている仕事で水戸ロック・イン・ジャパン・フェスとか、それからサマーソニックもやってましたし。今回はニッポン放送を離れて自由になったんで、さっそく見に行こう、ということで来たんです。そしたら会場で渋谷陽一さんにバッタリお会いして「僕、ニッポン放送の時は(ロック・イン・ジャパン・フェスに)義理立てしてこっちには来なかったんだよ」って言ったら、渋谷さんが「僕は毎年来てるよ」って。カックン、でした(笑)。
H:(笑)で、実際にフジロックを体験し、昔のフェスとの違いとか、どういう印象をもたれましたか?
K:今回は2日目まではとっても天気に恵まれましたね。最終日の午後は大雨で大変だったみたいですけど。フジロックも第一回目は、台風で一日だけしか出来なかったというのが伝説になっているけど、こういう大型フェスではウッドストックにしろ、イギリスのワイト島にしろ大変なことがあったわけで、混乱はつきものだったんだよね。でも続けて行くことで学習して、今回のフジロックをみる限り、ほんとに良くまとめられているなと思う。会場、主催者のみなさん、機材の進化、そしてお客さん、それぞれの面で事故がないように取り組んでいるし、エコもしっかり取り入れていて素晴らしいよね。10年たってとてもいい結果が出てきたんじゃないかと思います。
H:おそらく、世界でもここまでウェル・オーガナイズされたフェスってないんじゃないかって思います。さて、今回観たライブの感想をお伺いしたいんですが。
K:ステージが7つぐらいあるんだっけ? いちばん遠いステージ間は、おじさんの足だと1時間コースだね、大変だよ。往復すると2時間、アジャパーだね。よっぽど根性入れてこれ行くぞ、と思わないと行けないよね。


H:では、午前11時半過ぎ、最初に観たロドリーゴ・イ・ガブリエーラですが。
K:前に保科さんと一緒にロンドンのハマースミス・アポロで観た時、「うまいなぁ、この人たち」と。今回もお客さんからの熱狂的なものがすごく感じられて、ああ、日本でもけっこうな人気になったのだと感じた。
H:そうですね。グリーンは一番大きなステージで、おそらく彼らのことを事前に知ってた人は半分以下だと思うんですが、そのわりには盛り上がっていましたよね。訴求力ありますよ、あの音楽は。
K:ギター2台であれだけの音を創るというのは知的でもあるし。僕なんか古い人だから、歌わなくて電気もあまり使わないサンタナとかホセ・フェリシアーノとか思い出すね。
H:ああ、そうですね。ラテンやスパニッシュの要素がすごく強いですし。で、次は何を観たんでしたっけ?
K:素敵だったのは(次に観たステージの)レッド・マーキー。ここでは若いバンドがたくさん出て面白かった。特にゴシップがすごい良くって、うーん、これはほんとに驚いた。最近は太ってる歌い手さんが人気の時代だって言われるけど、たしかにゴシップのヴォーカル(ベス・ディットー)は、身体ゆすって、汗飛び散らかしてさ、それこそ半裸状態で脂肪をぶるんぶるん振るわせて歌う、ウォーって それって見せ物としても面白いけど、目をつぶるとね、ほんとに良く通る声で声量もあるし、キャラは立っているし、白人のソウルシンガーとしては大変なものです。同時に、ギターとドラマーが醸し出すビートとリズム感、これがちょっと普通のバンドじゃない感じで、わー面白いなと、これって進化しているロックだと思ったね。ギターとドラム、特にギターがこのバンドの肝かなと。
H:そのあたり、亀渕さんの目の付け所はさすがですね。普通はやっぱりどうしても女性シンガーに目が奪われてしまうと思うんですよ。確かに彼女の存在感がウリなんですけど、やっぱりあのバンドだから新鮮だという所がありますよね。あれでもし普通のバンドで、キーボードの入ったMG'sみたいなものだと、もう完璧にソウル・ショーみたいになっちゃうというか。
K:そうだね、曲によってベースが入ったり入らなかったり、ベースレスもたぶんギターの人がリーダーで、音作りを考えてやってるのかもしれないけど。面白いと思ったね。
H:そのあたりのバランス感覚が“今”というか。
K:今の音だね。ほんとに、あのギターの人、歯で弾いたり肩で弾いたり面白いこととやってさ。巧いよね。ほんとに面白かったね、ゴシップ。
亀渕昭信
64年(株)ニッポン放送入社、69年から「オールナイトニッポン」のDJを務め「カメ」の愛称で大人気に。99年同社代表取締役社長就任、同社相談役を経て 08年6月同社を退任。近著に『亀渕昭信のオールナイトニッポン 35年目のリクエスト』(白泉社)。本誌では連載コラム「カメカメポップス」
http://e-days.cc/style/columns/2/
を執筆中。
保科好宏
10代にブリテッィシュ・ロックに目覚め、ザ・フーファンクラブ初代会長に。以後ロック専門の音楽ライターとして長年活躍、本誌ではCD評を中心にレギュラー執筆中。共書に『ザ・フー・ファイル』(シンコー・ミュージック)ほか。またPIGなど海外アーティストのマネジメントも手がける
