
80年生まれ。97年1月、Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義でデビュー。99年、本名で本格的に音楽活動を開始。これまでに4枚のフルアルバムを発表している。現在は音楽活動に加え、連載や翻訳などの執筆活動、ジュエリー・ブランド〈aquadrops〉をプロデュースするなど創作の幅を拡げている。

坂本美雨オフィシャルサイト:stellarscape
http://www.miuskmt.com/
坂本美雨オフィシャルブログ:ニクキュウ ブロローグ
http://blog.excite.co.jp/miuskmt/
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―― そうか、ダンスもつかめないし、残せない。
「うん。舞踏とか今でもすごく好きで。いっぱい観に行くんですけど。つかめない、残せない、だけど人が発してる——人がそこにいて、身体が動いてることで発する何かっていう。唄う時の気持ちって、ほんと舞踏の方とかと一緒な気がするんですよね。見えない何かとつながりたい、みたいな。と同時に、そういうのもただの願いなのかもしれなくて、自分がそういう人間じゃないからこそ、そうなりたいというのもあると思うんですよね。そっちを信じていたい、というか」
―― え?「そういう人間じゃない」というのはどういうことなんですか。
「なんか⋯⋯真に見えないものだけ信じて、そこで本当に満足してられたら、それはわざわざ言わないことだろうし、唄わないかもしれない。そういう状態じゃないからこそ、そっちに行きたがったり、そっちの幸せを求めて、作るのかもしれないし⋯⋯とは思いますね。だって私はすごく執着する人間だし。たとえば嫉妬深いとか、物が捨てられないとか⋯⋯そういう執着がすごくあるから。それはほんとに、矛盾してるなと思う」
―― そうですか。あと、このアルバムでとくに惹かれたのが真ん中あたりの“komoriuta”と“Libera in Sleep”なんですよ。この2曲に感じられる母性には、あなたの表現したいことがかなりはっきりあると思うんですけど。
「そうですね。やっぱり、自分がすごく空っぽだと思ってて、それがぬぐえなくて——」
―― 空っぽ、ですか?
「うん。自分の考えてることとか、人間性とかには、ほんとに大したものはないというか⋯⋯<他人に与えられるものは何にもないなあ>と思って。でも唄うわけですし⋯⋯。その時に、声って、ただの呼吸であって、息を吸って吐いてるだけなんですよ。それは誰でもやってることですよね。でもそれにメロディーや想いが乗るだけで歌になる。そんな<身体を使って生めるものは私にもあ
る>っていう喜びが、すごく強くて。で、女性としてはいつか子供を産める、ほんとに命、生命を産めるのかもしれないっていうこと?それと声を生む、歌を生む喜びは、すごく近いと思ったんですよ。そこに、子供を産むことへの憧れとか神秘性も絡み合ってるんですけどね。アルバム・タイトルの<Zoy>っていうのは、欧米では女の子の名前なんですけど、ギリシャ語源で<生命>っ
ていう意味なんです。自分の中にちっちゃな生命があって、声を出すことでそれを生めるっていうことなんですね。あとは、自分がなぜ音楽をやるのか、音楽で何をしたいかって考えた時に、自分が音楽にしてもらったことをお返ししたいと思って。それは元気づけるとか勇気を与える、ということではなく——」

―― ではないんですか(笑)。
「そうそう、そういうことができる係の人はほかにいる。<係が違う>って、すごく思うんです。で、<私の係は何だろう?>って思ったら、自分は音楽にずっと守ってもらってたんですね。たとえば暗い気持ちとか、周りのイヤな環境とか、いろんなものから守ってもらって⋯⋯もう一度自分のことを見つめ直せたりとか、<ああ、ちゃんと身体があるなあ>と思ってもう1回社会に返ったり、いつも音楽には、そういうふうに包んでもらってた。だから<そういうことだったらしたい、できるようになりたい>って思った。その気持ちは、もしかしたら母性に近いかなと思いますね。包んであげたい、とか」
―― なるほど。音楽で自分自身の存在を実感できた人なんですね。
「そうですね。はい」
―― で、先ほどの2曲には、どうしてもあなたのご両親のことを思い浮かべてしまうんですよ。
「はい(笑)」
