
1977年大阪生まれ。幼いころから広く音楽をたしなみ、大阪芸術大学中退後、ミュージカルを志し19歳で渡米。現地でゴスペル、コーラスダンサー、ジャズシンガーなど、様々なキャリアを積む。クラブシーンをはじめ、舞踏や映画音楽など他分野とのコラボレーションも活発で、これからの活動に注目が集まる女性シンガーの1人である。

MAKI MANNAMI 『THE WORLD OF SENSE』
万波麻希 〜Maki Mannami〜 『10th insight』
http://www.10th-insight.com/
〈『夜ジャズ experience』 vol.7 〜MAKI MANNAMI 『THE WORLD OF SENSE』RELEASE PARTY〉。ライブ出演は万波麻希、アキコ・グレース・トリオ、TRI4THほか。本作プロデューサー須永辰緒と小西康陽によるレコードコンサートも。
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―― 前作は「自己解放の旅」という意味のタイトルだったが、万波麻希はアルバム・タイトルに象徴的な意味をもたせることが好きなようだ。今回の『World Of Sense』には「無限の感覚」という意味がある。
「人間って無限の超能力のようなものを生まれ持ってると思うんです。子供には大人がびっくりするような感性がありますよね。見えない色が見えるとか。でも、現実社会で大人へと成長していく内に、そうした感覚がいつのまにか無くなってしってしまう・・・。ビートルズの“アクロス・ザ・ユニヴァース”で、ジョン・レノンの歌詞に「終わらない雨のように言葉が溢れてきて、それが紙コップの中に滑り落ちる・・・私には何も怖れるものはない」というような意味のフレーズがあります。ジョン・レノンは詩人だったから、LSDの作用ももちろんあったのでしょうけど、もう感覚が研ぎ澄まされていて、言葉が次々と出てきたんでしょうね。私はドラッグ無しでもそうした世界に行くことが可能だと思うし、そうした高みに達したいという想いがこのタイトルになりました。音楽って目に見えないもの、とても抽象的な芸術だと思うんですよ。音楽を楽譜にした人はとても凄い人だと思いますが、でもそうして目に見えないもので人の心を動かすには、やはり感覚が研ぎ澄まされていないと難しいと思います」
―― 今回のアルバムには3つのカヴァー曲がある。ルー・リードの“Stupid Man”(“Stupid Girl”と改題)、サラ・ブライトマンの“Time To Say Goodbye”、そして映画『マルサの女』のテーマ曲だ。
「カヴァーは辰緒さんの勧めでやってみたのですけど、“Stupid Man”は家庭を顧みず、旅ばっかりしている放蕩なお父さんの話ですね(笑)。でも、私も旅が好きで、その女版みたいな感じで歌詞を書き換えました。“Time To Say Goodbye”は自分でも好きな曲で、よく歌ってたりもしたのですが、あえてジャズ・アレンジにすることなく、クラシックのテイストを壊さずに現代音楽・プラス・エレクトロ風にやってみました。ここでヴォイスとエフェクトで参加してもらったAGFは、辰緒さんが単純にファンだからということでやってみたのですが(笑)、でも見事にハマりましたね。『マルサの女』は原曲の特徴的なフレーズが頭にあったんですけど、それが逆に障害となって、最初はなかなかアレンジのアイデアが浮かばなくて苦労しました。でも、締め切りギリギリのところでポンってアイデアが閃いて、それからはスムーズに行きましたね。私って自分のアルバムではそれほどカヴァーをやりたいとは思わないんですけど、でも今回やってみて思ったんですが、カヴァーってアレンジ力というか、そのアーティストの真価が問われるところでもあると思いますね」

―― 万波麻希の楽曲は1曲の中でも構成が大きく変わったりと、とてもシアトリカルな要素に溢れている。ミュージカルなどのバックグラウンドを持つ彼女だが、そうしたものがベースとなってその音楽性を形成しているようだ。
「もともと思春期にミュージカルをやりたいと思って、それで声楽とかダンスを勉強して、ニューヨークに行ったんです。ニューヨークではミュージカルのレッスンもそうですし、ゴスペルの先生に歌を教わったり、ジャズのステージやオペラを観たりと、いろいろな音楽を学ぶ環境にありました。ミュージカルもいろいろあって、実験的なものはそれこそ音楽がプログレみたいに急展開するんですけど、そんな影響もあるのかもしれませんね」
―― 本作では全体のサウンド構築と共に、ヴォーカリスト的な部分も強く打ち出したものとなっている。ただし、そのヴォーカルも演劇やポエトリー的な要素に満ち、通常のヴォーカリストのそれとはだいぶイメージが異なってくる。
「これでも今回は自分の中では割ときっちりとした歌というイメージで歌っているものなんです。もっとヴォイス・パフォーマー的なものだけでアルバムを1枚作りたいと思ってるくらいで。ヴォイス・パフォーマーってことで言えば、自分の音楽に取り入れるかどうかは別に、ディアマンダ・ギャラスっていう5ヶ国語くらいで歌う声楽家・・・妖怪みたいな声でオペラを歌うんですけどね(笑)・・・・あとメレディス・モンクとか好きですね」
―― “Vida Espiral”では異色のポップ・ロック・フラメンコ・ユニットRockamencoのシンガー、KSK Aritaとのデュエットを行っている。前作でもフラメンコ調の作品をやっていたが、万波麻希にはこうしたエキゾティックでジプシー調の作品もよく似合う。
「男性シンガーとのデュエットはずっとやりたかったことなんですよ、Aritaさんは声も素敵な方だし。フラメンコが大好きで、フラメンコだけでポップス・アルバムを1枚作りたいくらいで、結構曲のストックもあるんですよ。でも、日本のマーケットはもちろんですけど、スペイン本国でも、伝統的なフラメンコと違って、商業的に見られすぎてしまってなかなか難しいみたいで・・・一応、ちょっとカンテ(歌)を習ったことをありますが、やるならもっと本格的に勉強しないと。私って弦楽8重奏もそうですけど、いろいろなものに興味を持って、普通の人ならそれで感動したで終わるところを、自分でやってみないと済まない性分なんでしょうね・・・あ、最近はポール・ダンスを始めたんですよ(笑)」
