また10分超の「幻惑されて」ではヴァイオリンの弓を使ったお約束のパフォーマンスを披露して会場を大いに湧かせたこの頃には、大袈裟ではなくデジャヴ感覚のような、まるで35年前の武道館公演を彷彿させるほどのバンドの一体感まで生まれていたのだから、何かとても現実とは思えない不思議な気分だった。というのも今回の再結成に際して最初に脳裏を過ぎったのは、過去2回(85年の“ライヴ・エイド”と88年の“アトランティック・レコーズ40周年記念コンサート”)の再結成ライヴの内容があまりに酷かったことから、個人的には全く期待していなかったのだが、いくらガッカリしたくないとは言えそんな心構えでこのコンサートに臨んだ自分が恥ずかしくなるような、予想を遙かに上回る堂々たるステージを見せてくれたのだから歓びも感動も一入だった。
そしてこの充実した中盤の演奏が終了し、一度暗転した後にスポットライトがステージを照らすと、そこにダブルネックを持ったペイジの姿が浮かび上がり、その瞬間会場全体を包む大歓声の中で厳かに始まったのはもちろん「天国への階段」。歌い終えた後、プラントが「ヘイ、アーメット、俺たち演ったぜ!」と語りかけると、アーティガン追悼にこれ以上相応しいものはない歴史的名曲に酔いしれた2万人の観客によるスタンディング・オベーションはしばらく鳴り止まず、誰もが胸に溢れる想いを押さえながら拍手と歓声で応えたこの曲は、間違いなくこの夜のハイライトとなった。
続けて「永遠の詩」をほぼオリジナル通りの演奏で聴かせた後、ドラマーのジェイソン・ボーナムを紹介したプラントの「彼は今夜、父親に追い付いた」という言葉に異論を唱える観客は一人もいなかったに違いない。続けて「ミスティ・マウンテン・ホップ」から本編の最後は、これほどドラマチックでスケールの大きな曲だったのかと改めて感心させられた「カシミール」。もうこの辺りになるとツェッペリン完全復活と言っていいほど4人の演奏が有機的に絡み合い、オリジナル・ツェッペリンを観ているかのような錯覚を覚えたほどだ。
観客の拍手と歓声が渦巻く中、ステージを降りた彼らがアンコールに応えて演奏したのが「胸いっぱいの愛を」。レーザー光線が飛び交う派手な演出で何度目かのクライマックスを迎えた後、2度目のアンコール「ロックン・ロール」でフィナーレを迎えて気が付けば、アッという間に2時間が経過。これは80年の解散以来、実質的には初めての本格的な再結成ライヴと呼べるもので、振り返ってみれば、序盤を除いて全てがクライマックス、全てが最高と呼べる内容で、こうして“ツェッペリン復活祭”は幕を閉じたのである。
そしてO2アリーナでのコンサート終了後、運良く隣接する会場インディゴで行なわれた関係者のみのアフター・パーティー、内容的には文句なしの“アトランティック・ソウル・レビュー”に潜入することが出来た。深夜12時30頃から始まったこのパーティーではオアシスのノエル・ギャラガー等も見掛けたが、O2同様、ビル・ワイマンズ・リズム・キングスをホスト・バンドに、まずはリズム・キングスのお抱えシンガーによって2〜3曲がウォームアップで歌われた。そして次にステージに登場したのは、サム&デイヴのサム・ムーアで、「ホールド・オン」「ソウル・マン」等、大ヒット曲を惜しげもなく披露。途中、サプライズ・ゲストでポール・ロジャースが登場し、06年にリリースされたサム・ムーアのソロ・アルバム『オーヴァーナイト・センセーション』で2人がデュエットした曲「ウィ・シャル・ビー・フリー」を聴かせてくれたのは嬉しかった。つい先頃来日したばかりのムーアは、伸びやかかつ力強いハイトーン・ヴォイスも健在な圧巻の歌声を聴かせれば、ポール・ロジャースのヴォーカルもムーアに負けず劣らずソウルフルで、改めて最高のロック・ヴォーカリストであることを再確認した。
続いてのパーシー・スレッジはあの名曲「男が女を愛するとき」他を、続くベン・E・キングは「スタンド・バイ・ミー」等を歌ったが、さすがに高い音程も苦しそうなら往時の声量もなかったものの、伝説のR&Bシンガーによるオリジナルのヒット曲を聴けたというだけで大満足だった。残念ながら時間の都合があって最後のソロモン・バークは観られなかったが、こんなソウル・レビュー、彼らが生きているうちに、日本でも観られないだろうかと思った次第だ。
それにしても、これだけ豪華なシンガー達をわざわざアメリカから招きながら、O2でのコンサートには出演させず、アフター・パーティーのみとはいかにも勿体ないと思った。しかも平日の深夜で関係者招待のみとあって、実際の参加者は会場キャパの三分の一程度の僅か1000人ほどだったのはいかにも寂しく、出演した彼らにも失礼だったのではないかと思う。また最初にアナウンスされていたピート・タウンゼントやロン・ウッドの不参加は残念だったし、“アーティガン・トリビュート”のイベントとして考えれば、内容的にこれで良かったのかという疑問も残る。これならば最初からツェッペリン単独のトリビュート・コンサートでも良かったのではないかと、、、。とは言え、今回のイベントは“ツェッペリン再結成コンサート”としては大成功だったことは間違いなく、ツェッペリンが2時間超えの価値あるライヴを成功させたことの意義は大きい。
最後に、これだけ今回のツェッペリン再結成ライヴが良かったと言っても、やはり実際に観られなかったツェッペリン・ファンは、本当に良かったのかという疑念もあるはずだと思うので、ここに正直に答えておこう。確かに巷間言われていたように、プラントの声は「移民の歌」を演らなかったことでも明らかなように往年のハイトーン・シャウトはもう出せず、キーもかなり下げたアレンジで歌っていたのはYouTubeでも確認できるだろう。しかしそういったことを全て踏まえた上で、別に70年代並みに凄かったとは言わないが、今回のライヴは現在のツェッペリンを楽しむことが出来たという意味で本当に素晴らしかったと言い切ることが出来る。この日のためにペイジは春先からO2で行なわれたプリンスやローリング・ストーンズ、エルトン・ジョン等のライヴに通って会場の音響を調査し、トレーニングして身体を絞って体力をつけ、充分なリハーサルを重ねて怠りなく準備、努力してきたからこそ、2時間ものライヴを務めることが出来たのは間違いない。当初は40分ほどの演奏時間の予定が1時間、90分、2時間と増えていったらしいが、それは世界中のファンの期待に応えるためでもあり、また再び自分達で取り戻し始めたバンドとしての自信とプライドの大きさに比例してのことだろう。そして何よりも大事なことは、レッド・ツェッペリンというレジェンド・バンドの名前を一切汚すことのない立派なステージをジョン・ボーナムの息子、ジェイソンと共にやり遂げ、また新たな伝説を作り出したことだ。
そして来年のことを言うと鬼が笑うかもしれないが、今回のライヴの成功で確かな自信を取り戻したツェッペリンの4人は、恐らく来年の夏前には世界中で待っているファンのため、ワールド・ツアーを行なう大きな可能性が出てきたことは間違いない。そうなれば来日するのは確実なだけに、今から大いに期待して待っていて欲しい。当然ながら会場は、東京ドームと大阪ドーム辺りになるのだろうが、出来ることなら、多少チケットは高くてもいいから、是非とももう一度、72年以来となる武道館でのスペシャル・ライヴを組んで欲しいものだ。

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