大人のジャズ ホセ・ジェイムズインタビュー
アルバムタイトルはマーティン・ルーサー・キング牧師に捧げたもの
 「レコーディングのクリエイティヴ・コントロールは素晴らしいことにジャイルスから任されたので、自由にやらせてもらった。オリジナルを30曲書いてそこからアルバムに収録できそうなものを選んで完成した。当初は大半をコルトレーンの曲にする予定だった。コルトレーンの曲「エクィノックス」、「セントラル・パーク・ウェスト」と「レゾリューション」の3曲をレコーディングしたけれど、コルトレーンの著作権を管理しているところから許可が下りず、これは大変だ(笑)ということでオリジナルを作曲したんだ」
 デビュー・アルバム『ドリーマー』のオープニングを飾る「ラヴ」は、彼のオリジナル作。ドラムン・ベースのビートをバックにしたミディアム・テンポのバラードで、彼のヴォーカルと本人によるサウンド・アレンジが素晴らしい。かつて学んだというニューヨークのジャズ・スクールの仲間たちによる演奏も切れがよく、コクのある彼のヴォーカルの魅力とともに、将来、ジャズの新しい側面を感じさせる1枚として記憶されていくのではないだろうか。
 「ジャイルスと出会ったことで視野が広がった。ニューヨークは世界の中心だと思っている人が多いけど、彼はグローバルな人で世界を視野に入れている。彼との出会いはとても刺激になったよ。収録曲の「パーク・ベンチ・ピープル」は、ヒップホップのアーティスト、フリースタイル・フェローシップのカヴァーだけどこの曲を歌うことはジャイルスのアイデアだった。当初ぼくはこのアルバムでストレート・アヘッドなジャズをやろうとしていたからね。でもこの曲を歌って良かったと思っている。というのはちょうど2カ月前に、有名なジャズ専門誌「ダウンビート」の編集者と話をして、面白いことを言われた。ホセ・ジェイムズはジャズ・アーティストでありつつ、ヒップホップもカヴァーしたアルバムを成功させた初のアーティストだと言われたんだ。すごく嬉しかったね」
 アルバムでは「モーニン」のほか「ボディ・アンド・ソウル」など、スタンダードを2曲カヴァーしている。しかしコルトレーンの曲をヴォーカル・カヴァーで試みたように、今後の彼はスタンダード・ソングを歌うだけに止まらないようだ。「今後、カヴァーしたいのはセロニアス・モンク。それとマーヴィン・ゲイ、アル・グリーン。彼らのカヴァー・アルバムをレコーディングすることはすごくチャレンジンングな企画だと思う」
 ところでアルバム・タイトルの「ドリーマー」という言葉には、どんな意味を込めたのだろう?
 「これは最初に出来た曲で、マーティン・ルーサー・キング牧師に捧げるつもりで書いた。このタイトルはアルバムをうまく説明していると思う。参加しているメンバーは日本人のピアニストからイスラエル人のギタリストまで、世界中から集まった幅広い顔ぶれだ。年齢についても、もっとも高齢のジュジア・マンスは78歳だし、ドラマーは18歳だ。年齢や国境を超えた、つまりはキング牧師が夢見ていた世界をこのアルバムで表現できたかなと思っている」
 かつてジャズ・ヴォーカルは、ルイ・アームストロングにはじまり、時代の流れとともに数多くのシンガーを生み出してきた。ホセ・ジェイムズはスタンダードを歌うだけでなく、オリジナルが書けること、アレンジやプロデュースもこなせるところに、現代的な才能の有り様を思わせる。今年29歳になるクレオールの彼が歌うジャズのこれからに期待せずにはいられない。


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