大特集 ビートルズと英国 / MYジョン・レノンMYジョン・レノン

ア・デイ・イン・ザ・ライフ/安西水丸

ぼくは根っからのジャズ派なので、ビートルズが話題になってきてもほとんど反応しなかった。それはビートルズがロックだったからだろう。もちろん好きな曲もあるが、猫も杓子もビートルズに熱をあげていた頃でも、「ふーん」といった感じだった。それは今でも変わらない。やはりジャズ派は古いのだろうか。

ニューヨークで暮らしていた時はビートルズの映画を二本見た。「イエロー・サブマリン」と「レット・イット・ビー」だがさほど面白いとはおもわなかった。

ニューヨークでぼくが髪を切ってもらっていた理髪店は「アンクル・トム」といい、壁にマッシュルームカットのビートルズの写真が貼ってあった。主人は「彼らの髪はわしがカットしてやったんだ」とぼくに言っていた。とんでもないホラ吹きおじさんだった。

ジョン・レノン(ポール・マッカートニーと二人で作った)の曲でとてもいい思い出がある。はじめてロサンゼルスに行った時のことだ。空港に友人が迎えに来て、そのまま彼の家へ行った。庭に西陽があたっていたので午後だったのだろう。プールサイドに金柑の木があり、枝の実が西陽を浴びて光っていた。友人の奥さんがコーヒーを出してくれて、友人がレコードをかけた。スロー・ロック的なソフトなリズムが流れた。ギターはすぐにウェス・モンゴメリーだとわかったが曲名はわからなかった。それでも何処かで聴いたような曲ではあった。友人に訊くと、曲名は「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」といい、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの作だと教えてくれた。そして瞬間に思い出した。あの二十世紀を代表する名盤、ビートルズの八枚目のオリジナル・アルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の最後に入っている曲だったのだ。楽園に迷い込んだようなこの曲を聴く度に、ぼくは西陽を浴びたプールサイドの金柑の実を思い出すのである。

PROFILE

安西水丸 MIZUMARU ANZAI(イラストレーター、作家)
1942年東京・赤坂生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。電通、ADAC(ニューヨーク)、平凡社でADを務めた後、フリーのイラストレーターとなり現在に至る。1979年、「パレットクラブ」を創設。2005年東京イラストレーターズ・ソサエティの理事長に就任。朝日広告賞、毎日広告賞、日本グラフィック展年間作家優秀賞、キネマ旬報読者賞受賞。著書多数(絵本、漫画、エッセイ、小説など)。TIS、JAGDA、日本文藝作家協会、日本ペンクラブ会員。

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