Paul McCartney Interview The Fireman 10年ぶりの新作『エレクトリック・アーギュメンツ』を発表!

音楽シーンの最前線を半世紀、トップ・ランナーとして走り続けてきたポール・マッカートニー。切れ間なくアルバムを発表し続ける一方、ライブ8やグラストンベリー・フェスティバル、グラミーや9・11救済ライブ、イスラエル和平コンサートなどライブ活動にも忙しい。昨年ソロ・アルバム『追憶の彼方に〜メモリー・オールモスト・フル』を発表したことが記憶に新しいが、今度はザ・ファイアーマンというプロジェクトで3枚目のアルバムをリリースする。

ザ・ファイアーマンは、キリング・ジョークのベーシストであり手腕プロデューサーとして知られるユースとポールとのダンス・プロジェクトで、'93年にトランスのアルバム『Strawberries Oceans Ships Forest』でデビュー。ただし当時はメンバーが誰であるのか明かされていなかったためあまり話題を呼ばなかったが、イギリスの媒体がポール・マッカートニーのプロジェクトであると明かすと密かに注目されるように。'98年には続くセカンド・アルバム『Rushes』をリリースした。

サード・アルバム『エレクトリック・アーギュメンツ』は10年ぶりの新作だ。過去2枚のアルバムが全曲インストゥルメンタルのダンス・アルバムであったのに対し、今回は初期のビートルズを彷彿させるラフで、エッジーで、シャウトする熱いポールのヴォーカルが聞ける曲や、雰囲気あるダンス・ナンバーなどが交じり合う表情豊かな作品となった。ユースのプロデュースでポールが全ての楽器を弾き歌っている。13日で13曲を即興でレコーディングしたそうで、そのせいだろうか、体温を感じさせる音が結晶化している。

さてこのアルバムの発表に先駆け、10月のはじめロンドンのアビー・ロード・スタジオで試聴会が行われた。ここにポールがじきじきに挨拶に現れ、インフォーマルな形でアルバムについて語ってくれた。

取材・文/高野裕子

—— 新作はどんな形で制作したのですか?

そのときの気分にまかせて作ったんだ。例えばギターの気分だったらギターから始めて。いろいろ弾いてみる。何回も何回も。その中から好きなリフがあったら、それを振り出しに曲を書き始める。ユースのやり方は面白いんだ。というかコントロール室に座って僕に指図するんだ。「う〜〜ん、ドラムスなんて入れたらどうかね?」て。それで僕も「そうだなok!」って感じで・・・・。それでエンジニアが大至急ドラムスにマイクを設置して、そこで僕がドラムスを叩く。ドゥデゥ・・・・とね。するとユースが「トムトムをもっとクレイジーにやってみたら?」って言って。僕が「OK!」って言ってそれをまた試してみて・・ユースはまるでDJみたいなんだよ。

—— すると曲は前もって書いたわけではないんですか?

まあ今回はユースの指揮のもとにレコーディングしたんだが、曲もあまりなくてね。“ヴォーカル入れてみよう”、なんていわれても、“曲がないんだけど”。というと、そうか・・・、“じゃあここででっち上げれば?”って。僕もその気になって“そうだな”、って(笑い)。

—— 歌詞はどうなんでしょうか?

歌詞は詩の本から抜粋したりした。ページをぺらぺらめくって、面白そうなフレーズを持ってきて。よくウイリアム・バロウズがやっていたカット・アップみたいなことさ。詩をそっくりそのまま拝借したんじゃなくて、一部だけ借用して。いろいろと集めた言葉をノートに書きとめて、使ったんだ。その点からいってこのアルバムは僕のキャリアの中で最も恥ずかしい瞬間かもね。スタジオに入ったときには曲がなかったんだから。即興の要素が強いんだ。

—— 即興は楽しかったですか?

スリリングだった。何が起こるかわからないという点でエキサイティングだった。これまでそれは多くの曲を書いてきて、その経験から即興していてもどの部分が曲として可能性があるかを見抜ける力がついたと思うんだ。だからやってみて、いいなと思う部分をみつけて、その部分を曲へと発展させていった。即興部分を歌いなおしたり、演奏しなおしたりしながら。でもそれをやっているときは、こんな方法でやっていいんだろうか。これまでのキャリアを破壊するような行為じゃないだろうか、なんて気持ちもよぎったがね。でも周りもこういう方法に恥じらいを感じている様子もなかったし、じゃあこれで行ってみようかって、作業を続行したんだよ。そのうちに曲が浮上してきて。

—— ここアビー・ロード・スタジオでレコーディンスしたのですか?

レコーディングはサセックスの自宅にあるスタジオでやった。

—— 1、2枚目のザ・ファイアーマンのアルバムよりは曲が基盤になっていますよね。

1枚目には曲は全くなかったから(笑い)。今まで出した2枚のザ・ファイアーマンのアルバムの場合、基本的には1曲が1コードなんだよ。トランスなんだ(口でまねる)。夜中にナイト・クラブで聞くような。今回は、もう一つコードを使ってみよう、ということになったんだ。なんとそれが大違いなんだよね。インド音楽もそうだけれど、コードが一つ加わっただけでドラマチックに変化する。だから今回は曲によってはコードが4つも入っているんだ!!(笑い)

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The Fireman/Electric Arguments

The Fireman/Electric Arguments
『エレクトリック・アーギュメンツ』
2008年11月24日発売
TRCI 21  ¥2,520(税込)


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