#61 ポップスというエサを与えてくれた親みたいな存在 (根本 要)
1.「子供の頃に買い集めたシングルと4曲入りコンパクト盤。お金がなくてアルバムが買えないから、シングルと、アルバムのおいしいところをかいつまんだコンパクト盤を、兄弟でお金を出し合ってひたすら買ってた」
ビートルズの嗜好性は年齢に左右されるよね。俺は今51歳で、小学生のときに兄貴の影響もあってリアルタイムでビートルズと出会った。テレビで来日公演を放送したときは、オープンリールのデッキで録音したり、画面に映る彼らを写真で撮ったり。当時8歳。だから俺にとってはポップスというエサを与えてくれた親みたいな存在。でも当時はジョンとポールの顔の区別がつかなかった(笑)。欧米人がアジア人を見ても区別がつかないっていうのと同じように、俺には全部外人。みんな長髪だったしユニフォームを着てたからね。
最初に買ったシングルは「シー・ラヴズ・ユー」。確か330円。次は「アイ・フィール・ファイン」と「涙の乗車券」かな。リアルタイムで初めて買ったアルバムは『サージェント・ペパーズ〜』。当時の日本盤には大抵メンバー紹介や曲解説がついてたのに、このアルバムにはなかった。だから聴いてもチンプンカンプンで、ライブ・アルバムかと思えば終わっても拍手が聴こえないし、途中でニワトリが鳴いてるし(笑)、なんだかなぁ? って感じだった。だけど評価はうなぎのぼりで、俺だけビートルズをわかってないんじゃないか? って。そりゃそうだよね、それまでずっとわかりやすいシングルばっかり聴いててアルバムを聴いたことがないわけだから、「トゥモロー・ネバー・ノウズ」も知らない。あれが俺の初芸術体験だったんじゃないかな(笑)。創り手の意図を理解する気持ちが必要っていうことでのね。確かに、彼らが俺たちの知らないところに行こうとしてるのはわかった。
俺がビートルズから学んだことは、完成されないすごさ。余白を残せる音楽。これは彼らの意図するところじゃないかもしれないけど、ビートルズがいなかったらアンプラグドなんていう形態は出てこなかったんじゃないかな。「ストロベリー・フィールズ〜」をジョンがアコギ1本で歌ったやつを初めて聴いたときえらく感動したわけ。制作途中の音かもしれないけど、完成形が完璧であれば余計に、シンプルなものが生きてくる。そういう体験をした人たちがアンプラグドに魅力を感じたんじゃないかな。聴き手に余白を残してあげることによって音楽も成長していく。俺はビートルズでは『アビー・ロード』がいちばん好きなんだけど、最後の「ハー・マジェスティ」が聴こえるまでの何秒間、ブツッていうあの終わり方。あれがすごく刺激的でまた聴きたくなる。でも人によっては"何これ?"って場合もある。よく"聴き手の先を行く"って言葉があるけど、それってなかなかできないんだよ。創り手は聴き手にわかってほしくてしょうがないんだから。わかってもらえれば売り上げも約束される、そこを否定するなんて普通は有り得ない。まぁ彼らはイヤというほど理由のわからない名声をもらってたから、それをぶち壊したかったんだろうね。"ついて来られるならついて来い"的なね。
最近思うのは、もしビートルズを聴いてなかったらもっと違う音楽を創ってただろうなぁ、ってこと。あまりにも血になりすぎちゃって、出てくる自分のメロディはそこから逃れられないし、同じように影響を受けてきた人の音楽もとってもよくわかる。でも最近はビートルズ的ポップスの影響を受けていない人の音を聴くと、妙に新鮮に感じることもある。
彼らの生地であるイギリスに行ったことはないんだよね。いわゆる"縁の地"にはまったく興味がない。それはアメリカも一緒で、アポロ・シアターにも行きたいと思わない。見て"へぇ〜"って思うのは華厳の滝でも多分同じ(笑)。一度BS-iの取材でクリーブランドの『ロックの殿堂』に行かせてもらったとき、ビートルズの衣装を見たらやけに感動したけど、結局ストロベリー・フィールズを見たとて、アビー・ロードの横断歩道を見たとて、そこにビートルズがいないことには、俺にはあんまり意味がない気がするんだ。
取材・文/佐々木美夏
最初に買ったシングルは「シー・ラヴズ・ユー」。確か330円。次は「アイ・フィール・ファイン」と「涙の乗車券」かな。リアルタイムで初めて買ったアルバムは『サージェント・ペパーズ〜』。当時の日本盤には大抵メンバー紹介や曲解説がついてたのに、このアルバムにはなかった。だから聴いてもチンプンカンプンで、ライブ・アルバムかと思えば終わっても拍手が聴こえないし、途中でニワトリが鳴いてるし(笑)、なんだかなぁ? って感じだった。だけど評価はうなぎのぼりで、俺だけビートルズをわかってないんじゃないか? って。そりゃそうだよね、それまでずっとわかりやすいシングルばっかり聴いててアルバムを聴いたことがないわけだから、「トゥモロー・ネバー・ノウズ」も知らない。あれが俺の初芸術体験だったんじゃないかな(笑)。創り手の意図を理解する気持ちが必要っていうことでのね。確かに、彼らが俺たちの知らないところに行こうとしてるのはわかった。
俺がビートルズから学んだことは、完成されないすごさ。余白を残せる音楽。これは彼らの意図するところじゃないかもしれないけど、ビートルズがいなかったらアンプラグドなんていう形態は出てこなかったんじゃないかな。「ストロベリー・フィールズ〜」をジョンがアコギ1本で歌ったやつを初めて聴いたときえらく感動したわけ。制作途中の音かもしれないけど、完成形が完璧であれば余計に、シンプルなものが生きてくる。そういう体験をした人たちがアンプラグドに魅力を感じたんじゃないかな。聴き手に余白を残してあげることによって音楽も成長していく。俺はビートルズでは『アビー・ロード』がいちばん好きなんだけど、最後の「ハー・マジェスティ」が聴こえるまでの何秒間、ブツッていうあの終わり方。あれがすごく刺激的でまた聴きたくなる。でも人によっては"何これ?"って場合もある。よく"聴き手の先を行く"って言葉があるけど、それってなかなかできないんだよ。創り手は聴き手にわかってほしくてしょうがないんだから。わかってもらえれば売り上げも約束される、そこを否定するなんて普通は有り得ない。まぁ彼らはイヤというほど理由のわからない名声をもらってたから、それをぶち壊したかったんだろうね。"ついて来られるならついて来い"的なね。
最近思うのは、もしビートルズを聴いてなかったらもっと違う音楽を創ってただろうなぁ、ってこと。あまりにも血になりすぎちゃって、出てくる自分のメロディはそこから逃れられないし、同じように影響を受けてきた人の音楽もとってもよくわかる。でも最近はビートルズ的ポップスの影響を受けていない人の音を聴くと、妙に新鮮に感じることもある。
彼らの生地であるイギリスに行ったことはないんだよね。いわゆる"縁の地"にはまったく興味がない。それはアメリカも一緒で、アポロ・シアターにも行きたいと思わない。見て"へぇ〜"って思うのは華厳の滝でも多分同じ(笑)。一度BS-iの取材でクリーブランドの『ロックの殿堂』に行かせてもらったとき、ビートルズの衣装を見たらやけに感動したけど、結局ストロベリー・フィールズを見たとて、アビー・ロードの横断歩道を見たとて、そこにビートルズがいないことには、俺にはあんまり意味がない気がするんだ。
取材・文/佐々木美夏
根本 要
ミュージシャン
1957年5月23日生まれ。埼玉県出身。81年スターダストレビューのボーカリスト&ギタリストとしてデビュー。「夢伝説」「今夜だけきっと」「追憶」「木蓮の涙」などのヒット曲を送り出すとともに、数々の記録を打ち立てた日本一のライブ・バンドとして不動の人気を誇る。08年11月19日にはセルフ・カバーと新曲を含む8曲入りアカペラ&コーラス・アルバム『ALWAYS』(TECI-1237 2500円)をリリース。
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