アビイ・ロードの歩き方―私のビートルズとロンドン―THE WAY TO ABBEY ROAD『アビイ・ロード』のカヴァーを見ていちどはここを歩いてみたいと思った人からとくに何も思わなかった人まで、リアル・ピープルにきくそれぞれのビートルズ、そしてそれぞれのロンドン。

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#48 ビートルズのムードをコピーしたいんです (松尾一彦)

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1. 「初めて自分で買ったビートルズのレコードがこれです!」
2. 1965年に買ったそのコンパクト盤。松尾さんは従兄に「のっぽのサリー」しかいい曲が入っていないと言われたという。ほかには「マッチボックス」「アイ・フィール・ファイン」「スロー・ダウン」を収録。「アルバムよりもコンパクト盤が好きで。同じデザインで色が違うコンパクト盤をいっぱい集めてたんだけど、東京に出てくるときに友だちにあげたり、なくしたりで、最近また集めてます。ビートルズのコンパクト盤は全部そろったので、あとはビーチ・ボーイズとかピーター&ゴードン、ベンチャーズもそろえたいですね」。

 小学校4年ぐらいのとき、女の子たちが学校に持ってきていた雑誌の綴じ込みで写真を見て、「これがビートルズなんだ」と思った記憶があります。当時は『シャボン玉ホリデー』でスリー・ファンキーズが歌っていたのがビートルズの曲だとも知らずに過ごしていて、5年生の夏休みに従兄のところに行ったら本物のビートルズのレコードがあって、聴かせてもらいました。ものすごくかっこよくて、うちに帰る途中で同じレコードを見つけて買ったんです。そのうち従兄はベスト盤の『オールディーズ』をうちに置いていってくれて、聴きまくりました。

 ビートルズが来日したときは、自分の中でビートルズがすべてになりはじめた頃。武道館公演をテレビで放送するというのに、修学旅行の日程と重なっていて、旅行に行かないと言ったら、校長と担任の先生が「修学旅行先では、校長先生の部屋にカラーテレビがあるぞ」と。だったら行くということにして、浅虫温泉の先生の部屋でビートルズを見ました。ステージに出てきて、チューニングして、あいさつするでもなく「ロックン・ロール・ミュージック」が始まって、なんてかっこいんだろうと思った。当時の日本のグループとは一線を画しているように見えました。一緒にテレビを見た子はほかに3〜4人いたけど、最後には僕しか残っていませんでした。

 実は小学校まではプロ野球の選手になりたかったんだけど、ビートルズにやられて、「これだな」と思っちゃった。中学からギターを始めたけど、ビートルズは難しいと思ったんだろうね。高校のときのバンドでも、「ゲット・バック」はギターのコードが少ないからやってみようとしたけど、ドラムはあのノリで叩ける人がいない。そうすると楽しくないんですよ。コードを弾くことはあったけど、ビートルズは触れないなと思った。

 卒業後、ジャネットというバンドでコンテストに出て優勝して、デビューすることになって、ロンドンに行かせてもらいました。アビイ・ロード・スタジオでレコーディングできると聞いてたんだけど、コーディネーターの手違いか、行ったらその日は休みで、中にも入れず…。まあ、こんなもんかと思いました。そのときはキングス・ロードやカーナビー・ストリートとか、当時ロンドンにいた成毛滋さんに街中を案内してもらいました。でも、映画『レット・イット・ビー』のあの屋上はどこなんだろうと話しても誰もわからなくて。そういう時代でした。

 ABCを結成してビートルズを演奏する機会は増えました。ただ、演奏をコピーするというより、そのムードをコピーしています。ロックンロールが好きだとか、きれいな曲が好きでビートルズを聴く人もいるし、レコーディングで間違えたところまでコピーする人もいる。ビートルズはマニアックに聴き込もうとする人の気持ちもとらえるような、いろんなフェチを満足させます。人気者とはそういうものですよね。

取材・文/淡路和子


松尾一彦
ギタリスト、作曲・編曲家、プロデューサー



1954年秋田県生まれ。大間ジローとともに結成したジャネットで74年にデビュー、76年オフコースに加入。作曲家として稲垣潤一ほか多くのアーティストに楽曲を提供、ギタリストとして吉田拓郎などのツアーに参加し、プロデューサーとしては斉藤和義らを手がける。96年よりソロ活動を続けるかたわら、オリジナル曲のほかビートルズをカバーするABCや、THE UNITなどのユニットでも活動。2008年8月2日、舞浜クラブ・イクスピアリでのソロ・ライブではビートルズ・ナンバーも演奏する。
松尾一彦 公式サイト



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