アビイ・ロードの歩き方―私のビートルズとロンドン―THE WAY TO ABBEY ROAD『アビイ・ロード』のカヴァーを見ていちどはここを歩いてみたいと思った人からとくに何も思わなかった人まで、リアル・ピープルにきくそれぞれのビートルズ、そしてそれぞれのロンドン。

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#36 リアルタイムで新曲が出るたびに衝撃を受けていました (杉 真理)

杉 真理

1.ジョージ・マーティンと撮った写真を持って。

2.リアルタイムで買ったシングル。「大森駅の駅ビル2階にあるレコード店で買いました。最初に『ロック・アンド・ロール・ミュージック』と『のっぽのサリー』を買いに行ったら、大学生くらいのお姉さんたちが『ロック・アンド・ロール・ミュージック』のジャケットの4人を指差して笑いものにしてたんですよ。『見てよ、この髪型!』って。僕が横からそれを取って買ったら、そのお姉さんたちに『なによ、あの子』って笑われたのを覚えてますね(笑)」。発売当時のEP盤『マジカル・ミステリー・ツアー』もいまや貴重。

 小学校5年のときに、チョコレートのコマーシャルで「ア・ハード・デイズ・ナイト」の曲と映像が流れてビートルズにはまり、レコードを買うようになりました。最初に衝撃を受けたのは、「のっぽのサリー」と「ロック・アンド・ロール・ミュージック」。それまでそんな曲もなかったし、あんな歌声も聴いたことなかったし、あのエネルギーにも驚いた。学校じゃ教えてくれなかったことだったんで。僕はリアルタイムで聴いてたから、新曲が出るたびに毎回衝撃を受けてた。次の衝撃に構えるんだけど、それ以上のものを出してくるんで、もう驚きっぱなしでした。
 70年代に大学生でバンドを組んだんですが、ビートルズ関係は真似できないんですよ。すごく難しくて。ビートルズをコピーする場合、全員その雰囲気を持ってないと、ひとりでも違うムードのやつがいると、もうビートルズじゃなくなっちゃう。それで目標としたのが、ウイングスだったんです。メンバーに女性もいたし、ひとりは竹内まりやだったんですけれども、女声コーラスをまじえて。ウイングスってコーラスが重要じゃないですか。アイデアといい、ポール・マッカートニーを最初から意識してました。70年代は頭でっかちな時代だったんで、理屈っぽい人ほど評価されるところがあって、どちらかというと、ジョン・レノンの時代だったんです。勿論ジョンは理屈を越えた人なのですが。ポップという言葉が、「軽い」とか「コマーシャリズム」だとか悪い意味で使われていて、そんななかポールが先陣を切ってがんばってたので、僕はこの人について行こうと決心したんです。
 僕がイギリスにレコーディングに行ったのは1989年。アビイ・ロードにはその前で写真撮りに行っただけなんです。ロンドンのハムステッドを散歩してたら、古い教会があって、「ここがエアになるんだよ」って言われて。その教会が改装されて、エア・スタジオ(ジョージ・マーティンのスタジオ)になっているんですよね。
 ジョージ・マーティンには1996年に加賀で行なわれたアマチュア・バンド・コンテストでお会いしました。マーティンさんが審査員長、僕は司会と12人の審査員のうちのひとりで。いよいよ審査のときに、たとえばみんなで「これはジョージ・マーティンさんに決めてもらおうよ」ってこそこそ話していると、「私は彼らと親しすぎるんで、決められないから、あなたたちで決めてくれ」って先手を打ってきたり。僕らが「ジョン・レノン賞はこの人がいいと思います」と言うと、マーティンさんは「はあ、彼がですか。私はどこを聴いてもジョン・レノンを感じなかったんですけど、きっと詞がジョンっぽいんでしょうね」って言って、最後にはその人に手を挙げてくれたり。12人のうちひとりだけ反対すると、「君は映画『十二人の怒れる男』のヘンリー・フォンダみたいだな」と冗談を言ってイギリス人ぽいところを見せてくれました。最後のあいさつのときには、こう言ったんです。「みんなもものすごくがんばったけれど、お客さんもすばらしかった。ほんとうにみんなを家に連れて帰りたい」。「サージェント・ペパー」の歌詞なんですよ。そういうちょっとしたウィットが、さすがジョン、ポール、ジョージ、リンゴ、リンダ、ヨーコというくせ者たちを仕切るだけの人だなと思いました。

取材・文/吉野由樹  写真/小倉直子

杉 真理
ミュージシャン


1954年福岡県生まれ。’77年Mari & Red Stripesとしてデビュー。その後もソロのかたわらBOX、ピカデリーサーカス等のバンドを結成。2008年1月に発売されたデビュー30周年ソロ・アルバム『魔法の領域』には、ピカデリーサーカスのメンバーで録音した「Make Love Not War」や、BOXのメンバーによる「Lennon=McCartney」などが収録されている。ソニー時代のアルバムが紙ジャケットで再発売中。5月23日にはソロ・ライブ「30th Anniversary〜魔法の中心〜」をShibuya O-EASTで行ない、6月22日の名古屋公演からミニツアーを開催。
杉 真理公式サイト http://homepage2.nifty.com/masamichi-sugi/


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