#17 これはもはや文学です! 詩の内容まで読み解きたい (林 望)
1.古今東西の恋愛詩を読み解く著書『愛詩てる。』(実業之日本社刊)では、日本発表時にノルウェイの森と訳されたNorwegian woodはノルウェイ産の木(木製家具)だという誤訳話から詩の内容を紐解き、情緒的かつイギリス独特の乾いたユーモアを秘める歌の魅力を紹介。こちらは今年の11月に『リンボウ先生の日本の恋歌』(集英社刊)として文庫化になったが、残念ながらビートルズのエッセイは許可が下りず削除。英国恋愛詩の訳詩集『新海潮音』(駿台曜曜社刊)では「Yseterday」の訳詩を掲載。
「Please Please Me」など初期の頃のビートルズは、結構荒っぽい。ハーモニーもあまり正確ではないところがあって、ちょっとスコットランドのバグパイプ風です。バグパイプは上がどんなメロディでも下の音がブー・ブーと常に一定で、ある意味ハーモニーが狂っている。そういう理屈に合っていないハーモニーがビートルズにもあって、独特の魅力がありますね。おそらくイギリス人じゃないと考え付かなかったんじゃないかな。賛否両論を受けながら常に自己革新を続けてきたのがビートルズなんですよね、そういうグループって他にはいない。初期の頃の単純なロックンロールを歌っている時代から、「Michelle」みたいなバラードになって、「Let It Be」あたりから哲学的な内容になって…。次々と新境地を開くので「今度のビートルズは全く違うぞ!」って常においてきぼり。追いかけるのに精一杯でしたよ。
ビートルズの歌詞は後半になると特に哲学的な内容で、どういう意味なんだろうと考えさせられるものが多い。難解で謎も多いけれど、すごく詩的で状況が思い浮かんでくるところに惹かれますね。例えば「The Long and Winding Road」。リアルタイムで聞いていた中高生の頃は文字通り“長く曲がりくねった道”=“難しい恋心”を意味しているのかと思っていた。でもイギリスを訪れた後に聞くと、イギリスの田園の細く曲がりくねった緑の小道が、ふと思い浮かんでくる。ひとつの歌詞に美しい実景が二重うつしになっているんです。40代になって『ビートルズ全詩集』が発売されたときは、じっくり読みましたよ。僕の著書で誤訳を解説したぐらい(笑)。ビートルズの詩は、その時代の若者だけにうける内容ではなく、人間の存在に対するメッセージが含まれているから、文学の域に達しているんです。だからこそ、今もなお人気が続き、誰の心にも響く音楽性があるのでしょうね。
取材・文/嶺月香里 写真/田頭真理子
ビートルズの歌詞は後半になると特に哲学的な内容で、どういう意味なんだろうと考えさせられるものが多い。難解で謎も多いけれど、すごく詩的で状況が思い浮かんでくるところに惹かれますね。例えば「The Long and Winding Road」。リアルタイムで聞いていた中高生の頃は文字通り“長く曲がりくねった道”=“難しい恋心”を意味しているのかと思っていた。でもイギリスを訪れた後に聞くと、イギリスの田園の細く曲がりくねった緑の小道が、ふと思い浮かんでくる。ひとつの歌詞に美しい実景が二重うつしになっているんです。40代になって『ビートルズ全詩集』が発売されたときは、じっくり読みましたよ。僕の著書で誤訳を解説したぐらい(笑)。ビートルズの詩は、その時代の若者だけにうける内容ではなく、人間の存在に対するメッセージが含まれているから、文学の域に達しているんです。だからこそ、今もなお人気が続き、誰の心にも響く音楽性があるのでしょうね。
取材・文/嶺月香里 写真/田頭真理子
林 望
作家・書誌学者
中学の頃、ビートルズファンに。35歳でイギリスに渡り、英国に興味を持つ。『イギリスはおいしい』で日本エッセイストクラブ賞、『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』で国際交流奨励賞を受賞。JR東海社歌の作詩を手がけるなど、詩人としても活躍している。






