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2010.02.24UP

ハードボイルドの<聖地>に行く

2月9日
 うわさにはきいていたが、<聖地>の整地というか本の整理がいきとどき、ということは何冊か抜いて持ち帰ろうというこちらの意図をそうそうにうち砕く書棚であった。といっても、ジム・トンプスン、チャールズ・ウィルフォードといった趣味にあう作家はあらかた揃ったので、後、必要なのは・・・。

 ハードボイルドの魔人、黄金期のペーパーバック・ミステリーの大コレクター、加えて世界の大小ゴルフ場制覇もちかい小鷹信光氏宅に、いずれ形をとるかもしれぬ<黒いプラン>のために、早川書房の編集者の千田さんと訪れたのであった。小生には初めての<聖地>探訪である。

 埼玉は時々、新潟の向こうのように感じてしまうが、埼玉の<聖地>はわが家から電車で20分のところで想像以上に近い! 読み始めて以降、自分の中の反理性を解き放ってくれつつあったコーマック・マッカーシー『ブラッド・メリディアン』を抱えていったが、章の半分もすすまないうちに着いてしまった。それにしても、この小説は、動揺するほどの殺戮本能をわれわれの神経組織にすり込んで麻痺させる異常本である。

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 しゃべりすぎだな、といいつつとまらない小鷹氏の楽しい本絡みの話は、こちらに書棚チェックの隙を与えないための本能的なものでもあり、老齢からくるものでもあろう(笑)。ありがたかったのは、「ミステリマガジン」から依頼を受けつつ、まだ紹介本がみつかっておらず、どうしようかと思案していた案件が小鷹氏によって、道筋がつけられたことである。

 それは「ワイルド・アット・ハート」の作者バリー・ギフォードの新刊で、セーラとルーラ・サーガの最終形The Imagination of the Heartの存在を教えられた事であった。ラッキー! それを紹介しよう。

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 帰りには、とにかく面白い犯罪小説を書き続けているジェームズ・カルロス・ブレイクの洋書がごっそりお土産として(断っておくが書棚から勝手に抜いたものではない)いただき、また、あまりに貴重なので固辞したにもかかわらず、<マルタの鷹協会の会報1982-2006>の簡易製本版の番号060までいただいてしまった。これが、何も知らない部外者には興味津々の翻訳ミステリ業界史となっているのだ。

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滝本誠(評論家)
1949年京都府生まれ。東京藝術大学卒業、専攻美学。「キネマ旬報」誌3月下旬号より新連載<セルロイドの画集 シネマ・アート・ランダム>開始。『映/画、黒片 クライム・ジャンル』刊行は5月初旬予定。
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