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2009.12.03UP

映画の配給・宣伝の方たちと鷹ノ巣山

10月31日(土)

 決して顔が広いとはいえない筆者の周りには山に関心のある人が少なく、寂しい思いをしていたが、映画の配給・宣伝の仕事をされているムヴィオラの高田さんとクレストインターナショナルの本木さんというふたりの女性から、山に登りたいというリクエストがあった。そこで、前々から山に行く話をしていたフリーの編集者・ライターの志水氏にも声をかけ、4人で山歩きをすることになった。

 高田さんは山の経験はないが、持久力には自信あり。本木さんはマラソンをやるアウトドア派で、高尾山には登っている。見るからに体力のありそうな志水さんも、高尾山には登ったことがある。

 目的地は奥多摩に決めていたが、さてどの山に登るか。最初に思いついたのは川苔山だ。山頂からの展望は抜群だし、滝や岩尾根など地形も変化に富んでいる。しかし、自分が初心者の頃を振り返り、下りの距離に無理があると思い、鷹ノ巣山に変更する。1737mの鷹ノ巣山は、1363mの川苔山より標高が高くなるが、奥多摩からバスで峰谷まで行けば、山頂までそれほど長くはないし、下りもメンバーのコンディションによって、中日原か倉戸口へのコースを選べる。

 筆者は1本早い電車で奥多摩駅に行って待機し、7:46着の電車で到着した3人と合流し、7:50発峰谷行きのバスに乗り込んだ。このバスを逃すともう午前中には峰谷行きはない。もし誰かが遅れた場合には、駅から直接登れる本仁田山に変更し、そこから鳩ノ巣駅に下るつもりだった。

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早朝の奥多摩駅、よく晴れている

 峰谷からしばらく林道を歩き、奥集落を通り抜け、登山道に入る。浅間神社の鳥居をくぐり、浅間尾根を登っていく。4人のスケジュールが合うまでにだいぶ時間がかかったが、晴れてくれたのは幸運だった。しかも、紅葉の時期にあたり、登山道の周辺の木々はきれいに色づいていた。

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バスの終点・峰谷周辺の紅葉

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奥集落周辺の紅葉

 志水さんは、先頭の筆者にぴたりとついてくる。本木さんと高田さんは少し遅れることもあったが、高田さんに熊よけ鈴をつけてもらったのが役立った。ジグザグの道やヤブなどで姿が見えなくなっても、音で進んでいるのがわかるからだ。結局、鷹ノ巣山避難小屋などで長めの休憩はとったものの、誰もへばることなく無事に山頂までたどり着いた。天気がよすぎて気温が上がり、大菩薩嶺や小金沢山までは見えるものの、富士山が見えないのは少し残念だった。それでも3人は、展望にじゅうぶん満足していた。

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浅間尾根の紅葉と青空

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山頂手前からの展望

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山頂手前の急斜面

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山頂手前から雲取山方向の展望

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鷹ノ巣山山頂と青空

 というよりも、こんなに喜んでもらえるとは思わなかった。登山道に入る手前の林道を歩いているときに、志水さんと山の魅力について話をしていた。頂上に立てば達成感があるし、展望や紅葉にも心を動かされるし、山岳信仰や修験道、狼の伝承などにも関心がある。しかし、筆者が最も引かれるのは、誰もがそう感じるかはわからないが、山には結界があり、そのなかでは感覚がまったく変わることだ。この感覚は山でなければ体験できないだろう。

 そんな話をしてから山に登りだしたのだが、そのうちに志水さんがこんなことを言い出した。これまで大場さんから山の話をいろいろ聞かされても、あまりぴんとこなかったけど、実際に登ったらよくわかったと。しかし筆者はその言葉を聞く以前に、すでにそれをはっきり感じていた。志水さんは筆者の真後ろを歩いていたので、振り向けば表情の変化がすぐにわかるが、なにかとんでもなく面白いものを発見してしまったかのように顔がほころんでいたのだ。その表情は写真にも撮ったが、微妙にぶれてしまい、かっこ悪いので、ここには出さない。

 下りは、榧ノ木尾根を経て倉戸口に出るコースにした。3人とも登山靴ではないので、落ち葉が積み重なった道には少し苦戦していたが、足取りはしっかりしていて、念のために持参したストックも必要なかった。下りでへばってくるともう写真を撮る気力もなくなるものだが、湖にこだわっていた高田さんは、奥多摩湖が見えてきたところでしっかり写真に収める余裕をみせていた。

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落ち葉が敷き詰められた榧ノ木尾根

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倉戸口バス停から月を見上げる

 しかし、この日のお楽しみはそれで終わらなかった。お疲れビールを飲もうと、奥多摩駅前の天益に行ったら、2席しか空いてなかった。先日、大岳山の帰りにも寄っていたので、おかみさんが筆者の顔を覚えていてくれて、親切にも携帯で連絡をとり、他の店の座敷を確保してくれた。

 紹介された酒処きみちゃんは、結界とはまた違うワンダーランドだった。とんでもなくファンキーなおかみさん、きみちゃんが、カウンターのお客さんたちを仕切り、盛り上げている。カウンターの横にある座敷は、普通の家のこぢんまりした居間に近く、取り皿や調味料はお客が勝手に食器棚から出す。つまみの注文もアバウトで、メニューがあるのか、ないのかわからないが、予想だにしないものまで含めてとにかくいろいろ出てくる。思い切りくつろげて、そしてリーズナブル。次にこのメンツで奥多摩に来たときには、天益ときみちゃんをはしごするしかないだろう。

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大場正明(評論家)
1957年神奈川県横浜市生まれ。中央大学法学部卒。映画、音楽、書物その他の評論。著書・編著書は『サバービアの憂鬱』『CineLesson15 アメリカ映画主義』など。趣味は登山、写真、料理。
大場正明 HOMEPAGE http://c-cross.cside2.com
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