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2009.11.25UP

大菩薩峠の南にそびえる小金沢山

10月24日(土)

 大菩薩峠や大菩薩嶺へのアクセスは、公共交通機関利用かマイカー(あるいはタクシー)利用かでかなり差が出る。公共交通機関の場合は、JR塩山駅からバスで裂石の大菩薩峠登山口まで行き、そこから大菩薩エリアの拠点となる上日川峠まで林道と登山道を歩く。マイカーの場合は、上日川峠までそのまま上がれる。「山と高原地図」では、裂石から上日川峠までの上りの時間は130分となっている。

 ところが昨年、便利なバス路線が登場した。昨年の夏に大菩薩峠と大菩薩嶺に登ったときにはまだなかったが、秋にJR甲斐大和駅と上日川峠を結ぶ路線が運行を開始した。これで公共交通機関でも上日川峠まで上がることができるようになった。

 この新路線を利用するかどうかはコースによる。大菩薩峠や大菩薩嶺に登るだけなら、利用する気にはならない。上日川峠の標高は1580m(ちなみに裂石の標高は890m)で、1900mの大菩薩峠との標高差は320m、登りの時間は75分、2057mの大菩薩嶺との標高差は500m足らずで、唐松尾根を行けば登りの時間は95分。これでは山の高さやスケール、自然や空気を身体で感じることはできない。しかも、裂石から上日川峠に至る登山道には、立派なブナやミズナラ、クリなどが目を引く樹林があり、とても気に入っている道でもある。

 それでは大菩薩峠の南にそびえる小金沢山(2014m)に登る場合はどうか。地図では、上日川峠から石丸峠を経て小金沢山山頂まで3時間となっている。裂石から4時台か17:10のバスに乗って帰るためには、それなりのペースで歩かなければならないが、今回も裂石から登ることにする。

 ただしこれは、好天を前提にした選択である。2、3日前から大菩薩方面は快晴という予報がずっと続いていた。ところが電車から次第に明るくなる空を見上げるとどんよりと曇っている。裂石に到着し、そばで準備をする男性に「今日は快晴の予報じゃなかったですか」と聞いてみると、こんな言葉が返ってきた。「自分もそのつもりで出てきたんですけど、さっき携帯でチェックしたら一日中曇りに変わってました」

 昨年の夏に来たときには、下山時に突然の激しい雨に見舞われているので、浮かない気分で歩き出したが、紅葉した樹林のなかを歩くうちにいつもの調子になってきた。急いだつもりはないが、ここは慣れた道なので標準タイムより30分ほど早く上日川峠に着き、小休止して石丸峠に向かう道に入る。上日川峠までは前後に登山者がいたが、ここからは一人だけの静かな山歩きになる。沢を渡り、笹に覆われた樹林を進む。再び沢を渡り、唐松の林に入る。唐松の紅葉は派手さはないが、同じ色で埋め尽くされた光景は美しい。

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林道の道標の上に栗の実が

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上日川峠に向かう登山道の紅葉

 そして唐松林を抜けて笹原に出ると、一気に展望が開ける。これから登る小金沢山の重量感のある山容、その右奥には、今日は拝めないだろうと思っていた富士山がかなりくっきりと見える。さらに右に目を向けると、上日川ダムとその彼方に南アルプスも薄っすらと見える。そして左方向、小金沢山の手前には、狼平と呼ばれる笹原が広がっている。奥多摩の雲取山と飛龍山の間にも狼平と呼ばれる場所があるが、個人的には気になる名前である。

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石丸峠に向かう登山道の静かな樹林

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石丸峠に向かう登山道の唐松林

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石丸峠付近から小金沢山と富士山

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石丸峠付近から富士山

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上日川ダムの彼方に南アルプスも

 その狼平に出るまでには、石丸峠を経て天狗棚山を越えなければならないが、このピークからの展望の素晴らしい。大菩薩湖が見渡せるし、北に目を向けると、熊沢山と大菩薩嶺に連なる妙見ノ頭がよく見える。天狗棚山を越え、笹原が気持ちいい狼平を抜けると最後の登りがはじまる。針葉樹林帯のなか、苔むす大岩や張り出した根、倒木などをすり抜けて進む。頂上にたどり着いたときには、展望は見事にガスに覆われていた。

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石丸峠付近から狼平

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天狗棚山から大菩薩湖

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天狗棚山から熊沢山と妙見ノ頭

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ガスに包まれた小金沢山山頂

 ここまであまり休憩をとらなかったので、頂上ではゆっくりする。おにぎりやハンバーグ、リンゴや柿で腹を満たし、熱い紅茶を飲んでいるうちに、だんだんガスがとれてきた。最初に奥多摩の長大な石尾根が浮かび上がってきた。それから富士山も裾野が姿を現した。全部見えるのではないかと待っているうちに、13:20になってしまったので出発する。結局、下りの間に富士山の山頂から雲がとれることはなかったが、雨にもふられなかった。裂石には16:30に到着し、余裕でバスに乗り込んだ。

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小金沢山山頂から奥多摩の石尾根

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小金沢山山頂から富士山

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大場正明(評論家)
1957年神奈川県横浜市生まれ。中央大学法学部卒。映画、音楽、書物その他の評論。著書・編著書は『サバービアの憂鬱』『CineLesson15 アメリカ映画主義』など。趣味は登山、写真、料理。
大場正明 HOMEPAGE http://c-cross.cside2.com
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