2009.04.24UP
トム・マッカーシー監督の『扉をたたく人』の試写を観る。
「CDジャーナル」の連載で取り上げるので、内容にはあまり踏み込まないが、これは必見の映画だ。アメリカで封切られたときには、わずか4館だった上映館が、最終的に270館まで拡大したというが、それもよくわかる。一見地味だが、口コミで話題が広がっていくような作品だ。

マッカーシー監督は、プレスのなかで「9・11以降、この国が人々を、特に不法滞在者たちをどのように扱っているのか、という疑問が本作の物語へと導いたんです」と語っている。
9・11以後のアメリカや不法滞在者がテーマの映画というと、社会派的な作品を連想するかもしれないが、マッカーシー監督は、それを直接的には描かない。たとえば、自由の女神とかつてワールドトレードセンターがあった空間を対置するような映像を通して、間接的に巧みに表現していく。アフリカン・ドラムのジャンベ、フェラ・クティのCD、ベートーヴェンのピアノ・ソナタなど、音楽も重要な役割を果たしている。
それから、"訪問者"を意味する原題にも注目すべきだろう。以前、このブログで取り上げたドン・デリーロの『墜ちてゆく男』には、登場人物のひとりであるリアンが、カイロを旅したときのことを思い出し、訪問者の立場から白人である自分を見つめるというエピソードが盛り込まれていた。
この映画にも、そんな視点の転換がある。主人公は、訪問者を拒んだり、受け入れるだけではなく、自らが訪問者の立場に立つことによって変貌を遂げていくのだ。
