2009.11.26UP
不況になるとヴァンパイア映画が人気を博す、という説がある。経済的恐慌から、超自然的恐怖への逃避、ということらしい。
女子高生とヴァンパイアの青年の禁断の恋を描いた「トワイライト〜初恋~」が世界的に大ヒットを記録したことは、その最たる好例、といえるかもしれない。
シリーズ第2弾の「ニュームーン/トワイライト・サーガ」は、ヴァンパイアのエドワード(ロバート・パティンソン)が18歳の誕生日を迎えたベラ(クリステン・スチュワート)に別れを告げるエピソードからスタートする。これ以上彼女を愛すると、危険な目にあわせることになるという理由から、彼は一族共々ベラの前から姿を消すのだ。

そのベラを慰め、守ってくれるのが幼馴染のジェイコブという若者──前作では小さな役どころだったネイティヴ・アメリカンのキャラクターだが、演じるテイラー・ロートナーが見違えるほどたくましく成長して再登場! 見事な変身振りを披露する。
いかにも草食系のパティンソンとは対照的な肉食系アイドルの登場というところか?
もっとも彼の変身はその美丈夫に限らない。ベラの危機に際して彼は、なんと、狼男へと変貌するのである。それも一瞬にして!
つまりこの映画では、狼男ものでは定番の変身の過程がじっくりと描かれることはない。
エドワードの宿敵で、かねてベラの命を狙う赤毛の女ヴァンパイア、ヴィクトリアとジェイコブが森の中で繰り広げる決闘シーンでは、地面をけって飛び上がったジェイコブが、空中で瞬時にして巨大な狼へと変貌する。
クリス・ワイツ監督もお気に入り、というこのシーンの最大の魅力はVFX(視覚効果)にも増して音楽だ! 激しいアクションが展開する画面に流れるのはシンセ・ビートに乗ったトム・ヨークのクールな歌声の「ヒアリング・ダメージ」なのだ。このヴィジュアルとサウンドのハイブリッド効果にはぞくぞくさせられる!
その後ドラマはヴァンパイアと、その脅威に結束を固める狼族との対立を背景に、ベラが死んだと勘違いしたエドワードが、自らの命を絶とうとしてイタリアへ向かうという、まるで「ロミオとジュリエット」さながらの展開となる。
クリス・ワイツといえば、彼が兄のポールと共同監督した「アバウト・ア・ボーイ」が忘れがたく、とりわけ音楽のセンスが抜群だった。その特長は本作でもトム・ヨークの起用が好例だが、遺憾なく発揮されて注目に値する。

エンド・クレジットでまず流れてくるのはザ・キラーズの「ア・ホワイト・デーモン・ラヴ・ソング」。それに続いて登場するのが、ベラとエドワードのイメージ・ソングという趣のデス・キャブ・フォー・キューティーの「ミート・ミー・オン・ジ・エクイノックス」。
劇中に起用されなかった曲も含め、この映画のサウンドトラック・アルバムにはインディー・ロックのファンにはたまらなく魅力的な顔ぶれが勢ぞろい。グリズリー・ベア、エディターズ、ボン・アイヴァーなどなど......。既製曲のリミックスを提供したミューズを唯一の例外に、全曲が本作のためのオリジナル楽曲というのも贅沢である。
リンキン・パークを筆頭にいわゆるハード・ロックを起用した第1作からは思いも寄らぬこの大胆な路線変更は大歓迎だ。
ミリオン・セラーは確実と思われるアルバムだけに、クリス・ワイツが楽曲の提供を希望したアーティストは2つのバンドだけを除いて、すべてO.K.だったというが、おいしい話にNO!と答えたのはキングズ・オヴ・レオンとアーケイド・ファイアだった。
